三国志故事物語

三国志故事物語

三国志故事物語

役所へ手続きに行ったら図書館が併設されていたのでふらっと寄って、本棚眺めていたら見つけた本です。
あーあるよねこういう本。なんか有名な言葉を拾って、関連する演義のエピソードを抜き書きして……と思いながら本を開いたら陳寔*1とか書いてある。何事?! と思ってきちんと読んだら別に演義ベースで書かれておらず、演義の話をする時は断り、正史三国志の範囲以前の出来事まで取り扱い……。いつの本だ! 1993年……三国志ファンのバイブル、ちくま文庫正史三国志の1巻が1992年12月に出て、最終8巻が出たのが1993年7月ですよ! 後漢書*2の和訳が出たのはさらに後*3! なんですかねこのオーパーツ的な本は……。
この本では「白眉」や「涙を揮って馬謖を斬る(泣いて馬謖を斬る)」などの有名な言葉から「燭を秉りて夜あそぶ」というようなあまり有名でない言葉まで三国志にまつわるフレーズをその背景を交えて紹介しています。
正史三国志が認知され始めた頃に見られた演義と正史の混同や、正史の方が偉いんだぜみたいな書きぶりは一切なく、純粋に楽しく三国志周辺の知識を付けることができる有用な本です。ほんと1993年になんでこんな本が存在し得たんだ……。世の中わからぬものです。

*1:陳羣の祖父

*2:正史三国志の範囲以前の出来事が書かれた

*3:全訳後漢書とか確かまだ刊行中だし

真田丸 第45話 「完封」(11月13日放送分)

9イニング200球完投勝利 被安打7 失点5 自責点3 という感じでしたね。
「完封?」「完封!」(迫真)

ミサしてる間に砦を落とされました

これでは明石掃部がオレンジじゃないですか!

又兵衛「戦の仕方を教えてやるよ!」

又兵衛「後藤又兵衛見参!」
バキューン!
又兵衛「撃たれてねえ! 撃たれてねえ!」
先週後藤丸計画を幸村より先に立てて「やはり又兵衛、ただものではなかった」感を出したのにこれか! 又兵衛をどうしたいんだ!
あとここの戦いは木村長門が活躍したんですがカットされましたね。

毛利勝永「内通者がいる気配があるな」

やはり毛利ただものではない……。

幸村「怪しいやつをあぶるよ」

そして厨房で怪しいやつをあぶろうとする幸村。怪しいやつ……織田有楽町……いや、あの場にもう一人いる! 厨房の主大角与左衛門! 内通メールに書かれていたおの字もある。「お」おすみよざえもん!
だから幸村は与八を大角の下に付けたんですよ。こういう感じの古畑任三郎でもやってた。わかる。

高梨内記「博労淵砦が落ちた!」

幸村「うん策でね。あそこの兵は逃がしておいた」
内記「さっすが幸村様」
薄田兼相「許された」
薄田兼相は風俗に行っている間担当の博労淵砦が落とされたので見た目ばかり綺麗でも食べたらまずい橙に例えて橙武者と笑われたマンです。

信之「うちで密談しないで!」

また信之兄さんの寿命が縮まってしまう。特になんなんだよ平野は信繁に罵声ばっかり浴びせておいて何が「源次郎のためにも!」って!

信之「源次郎のために何かしてあげたいのだ」

稲姫「息子が敵方で参加してるんだよ何寝言言ってるんだ」
ですよねー。
おこうさん「そば粉が出せるよ!」
またそばか!
しかしここまで信之兄さんが幸村のこと気に掛けてるのに幸村は信之兄さんのこと全然気にしてないんだもんなあ。ここまで気にしてないからにはきっと何かがあるはずですけど。

春ちゃん「私も何か戦争の役に立ちたい」

幸村「絶対やめて」
理由を言わないのは理由を言うと梅ちゃんと同じように死んで梅ちゃんと同じように幸村にとって永遠になろうとするとか危険なことをするからだな……。

家康「真田丸危険すぐる秀忠危険な理由わかるか」

家康「大きさと位置と高さな! どうしてわかんないの!」
秀忠(高さとか地図見ても絶対わかんねーじゃねえか……)

幸村「次回の大河ドラマの宣伝もしちゃうよ」

さすが大河ドラマオタクが脚本やってる大河ドラマだなあ。

家康「関ヶ原で90万石溶かした顔の人こんにちは」

家康「120万石が? 何万石であったかのう?」
これ昌幸に「家康さんどこに封じられたの? え? 聞こえなかった! えっ江戸?」とか言われてたやつと同じだ!
大層な文とか兼続に言ってるし昔は色々我慢してたこと我慢しなくなってるなあ家康。
あと煽りメールを出すと14年も粘着されるということを覚えておかなければなりません。人を煽れば穴二つ!
それを理解したならどんどん煽っていこうな!
http://www.nhk.or.jp/sanadamaru/special/movie/movie18.html

淀殿「兵の士気を上げるために甲冑来て見回るわ」

兵士「えっこの城の上層部ってもう完全にこうなの……?」
兵の士気が下がったようです。
あの陣羽織秀吉が来てたハイパー羽根羽根陣羽織ですね……。

家康「真田同士戦え。な?」

内通者は徳川方にもいるんやで!
本来上杉も徳川方真田も真田丸とは別方面の持ち場だったので実際に大坂方真田とバトルすることはなかったそうで。まあ普通別方面に当たらせるよね。何するかわからないし。

大助「♪高砂や〜」

真田伝統の挑発行為になったぜ。大坂城に来てから何に関しても一生懸命な大助いいよね……。

ちょうすがめさん「閂が開かない〜」

五人衆がそれぞれ活躍しているのになぜか萌えキャラにされてしまう長曾我部さん……。だがそれがいい
ちょうすがめさんが石を落としているあの仕掛けは「石落とし」といい色々な城に設置されている防御機構です。

景勝「真田日本一の兵!」

島津忠恒「それワシのセリフ……」
ままならぬ自分の立場に対して幸村の活躍で留飲を下げてしまうお屋形様いいよね……。なんかあの直江も笑ってるしさ。ほんと直江は無言で演技するなあ。

木村長門「流石真田さんです! 大勝利っすね!」

幸村「みんなには内緒だよ。いやーこんな戦いはボクも初めてなの。マジ緊張したあ」
木村長門「へーそうなんですか、ええっ?!」
自分を信じて慕って付いてくる木村長門木村長門が可愛くて思わず本音漏らしちゃったんだろうなあ。木村長門好青年だなあ。いいなあ。最後の希望だなあ。

たのしい真田丸 おわり

ああ……。
https://twitter.com/rerasiu/status/797782759691284480

真田丸 第44話 「築城」(11月6日放送分)

OPがない?

一瞬尺が足りなくてこういうことをしたのかと思ったのですが、真田丸はこれまでアバンタイトル*1を使うことなくずっと来ていたので、そういうことぐらいでそんなことをするはずがないのでした。
最近の大河ドラマアバンタイトルに解説を入れたりキャッチーなシーンを入れて20時になってチャンネルをグルグル回している人を掴もうとしていたりしていたのですが真田丸は昔ながらの大河ドラマのスタイルを守ってなのか頑なにアバンタイトルを使いませんでした。脚本の三谷さんが大河ファンだからでしょうか。
なのでこれは演出と見るべきで、アニメとかで時々あるOPをわざと重要な途中のシーンや最後に持ってくる作戦なんだろうなと。
私がフォローしている方も以下のようなことを。
https://twitter.com/delta0401/status/795219711319363584
でも本編が面白いのでこのことを忘れて見入っていたんですよねえ。

「籠城と決まった」

牢人たちの不満が高まっています。

「籠城と決まったようでござる」

なんで即刻情報が洩れているんだ! スパイだ! 「お……」って誰だ! 誰なんだ!
「これで勝ったな」
幸村の戦術眼が家康に裏打ちされました。

作兵衛合流

作兵衛「信吉様と信政様も敵陣に来ています」
幸村「……?」
佐助「仙千代様と百助様のことです」
幸村が時代に取り残されておる……。

又兵衛と幸村の出城設置候補地が同じ

これまで劇中の又兵衛はめんどくさい死にたがりなだけで実際の実力はどうなのよってところがわからなかったのですが目の付け所が幸村と同じと示して彼も実力者ですと見せましたね。
そして幸村が又兵衛に戦法を説明する場を作って視聴者にも戦法を自然に解説しています。
ところで実は真田丸建築前に後藤又兵衛が同じところに砦を築こうとしたのに後から幸村が来て又兵衛を追い出して真田丸を建築してしまったみたいな話も残っています。この話の信憑性は……ちょっと私には判断しかねます。
ところで12日のブラタモリでもやっていたのですが、大坂城は南北に長細い台地の北端に建っていまして、北東西は湿地帯になっていて基本的に弱点は南だけなんですね。ちゃんと見る目があれば南が弱点というのはわりとわかりやすかったのではないでしょうか。
だからこそ南から攻められて、南にあった真田丸が大戦果を挙げたのでしょうけど。

「これが父から受け継いだ真田の軍略よ」

なんか本当に父から受け継いだままな感じでいかにも2回の上田城バトルに近い戦法過ぎてこれ通じるのかなあ? という気がしますが真田丸はかなり頑強に抵抗した記録が残っているので通じるんだろうなあ。
この後家康が若者の戦法がなってないと自ら指導するシーンもあるから通じるのだろうなあ。家康がいつまでも関が原にこだわってるんじゃねえと言うシーンもあるから古い作戦は気になるんだよなあ。

豊臣首脳部「やっぱ牢人は信用できねえ」

そもそも戦いをするのに信用できない人を呼んではいけないのです。
有楽町「木村長門のように譜代でも力ある人いるし」
そうだな薄田兼相とかな!
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%84%E7%94%B0%E5%85%BC%E7%9B%B8
薄田兼相いかにも牢人くせえムーブなのに譜代なのね……。

幸村淀殿ホットライン

別ルートがあるのは強いけどそれを使うことで余計な不信を買うこともあるんだよなあ。なので「そなたの出城だけは作って良いことにする」に「やなこったいでござる」と返したのは正しい。
淀殿「秀頼に全部任せてるし、秀頼が決めたことに口は挟めないよ」
めっちゃ挟んでるし。でもこれを淀殿に言わせたのが後で効いてきますね。

大野修理「俺が責任を取るから好きにしてよ。築城しなよ」

大野修理の株価が連日ストップ高

真田の赤備え

沢蟹の赤備えから真田の赤備えへ。同じカラーで圧倒してくるのって視覚インパクトが強くて相手を逃げ腰にするのに良いんですよ。幸村の納期急がせ発注に対して生乾きの二度塗りした鎧でかぶれた与八が可哀想。かぶれた与八を気遣わない作兵衛の腕を与八が鎧にこすりつけてお前もかぶれろってしてる与八がいい。

松がちゃんとメッセンジャーした

メモが洩れたり伝言ゲームしておかしなことになるかと思ったらきちんと伝えていた!  河原さんが「伝言教えて」って言った時に来ちゃったなーこれと思ったんですがびっくり! そして松が舞手やってた話を回収して、その恰好を見て小山田茂誠がニッコリしているのも良かった。あと阿国が代替わりしてることで松の年齢不詳ぶりが強調された!

叔父と戦ってはならん

戦功を挙げて出世したい信吉信政からしたらいい迷惑です。甥からしたら叔父が凶状持ちなので公務員になれませんみたいな感じかなあ。信政からしたらたまらんよなあ。
信政が制御できないから信吉に発現させる茂誠は賢い。信政の傳役の三十郎はハイパー幸村派だからここは勝ち目がなかったね。可哀想な信政。でも離れていても家族団結が真田丸のテーマだから。

浮気は香りからバレる

「いつになったら儂の心は安らぐのか……」
死ぬ直前ですね。しかも40年以上あと。素敵な自分語りかと思ったら浮気シーンだった! そしてお香で即刻稲姫にバレてた! というかあの効果音何! 流血沙汰になる!

大野修理「何のことやら」

大野修理株ストップ安!
でもここですまぬって言えるのが大野修理のいいところで、三成にはなかったところ。三成より決断力は低いけど、調整能力はある。

大野修理「こうなりゃ秀頼様から直OK出させよう。他の奴も口挟めなくなるだろ」

大野修理の株価再びストップ高! 乱高下! 押せないところは押さないけど、できる範囲で何とかしようとする大野修理ステキー。
ところで後藤と毛利がここから出ていくぜってわざわざ幸村に言いに来るの、後藤と毛利は幸村を自分たちとはなんか違うと思いながらも、高く評価していることがわかっていいですね。
その後ろで大野主馬と又兵衛が睨み合ってるの笑う。又兵衛は最初大野修理にガンつけたんですけど修理はスルーしたのに主馬は睨み合った。ヤンキーかお前ら。それとも主馬は修理が言ってるように本当に「ああいう顔」なのか。丸く収めようとして言った方便じゃなかったのか。

秀頼「この出城、仕上げよ。私が許す」

勝利のテーマ*2来たあ! これで大坂方勝つる!

秀頼「この城の主は私です。この戦、牢人たちの力を借りねば、我らの負けでござる!」

秀頼涙目じゃないか。どんだけ秀頼を抑えつけてきたんだよ淀殿
しかしなー淀殿、これで「秀頼まで奪われた。よりによって源次郎に」とか思ってないといいけど。あとこの時の淀殿の表情、秀頼に逆らわれた驚きと悲しみと、秀頼の成長を喜ぶ……みたいなのが混じっている感じにも見えましたけど、こうも見えました。
「秀頼まで逆らわれるなんて……私ってやっぱり不幸だわ」
不幸に酔ってるウーマンというか……。

政宗「ねーねー景勝さん。信繁って大坂城に入ってるんだって。バカだねー」

セリフなしで後ろで演技してる直江を合わせて見るに、心労になるからってこのことわざと耳に入れてなかったな。

政宗「伊達越前守政宗!」

そういうのもういいから。ところで家康の内野さん、老人ガラガラ声演技しながらそのまま大声も出せてるの一体どうなってるの。芸達者すぎる。あと景勝泣きそう過ぎる。

いろいろな人とあいさつするよ

幸村が移動しながら大坂城メンバーと次々会話するの、舞台劇みたいでいいですね。

  • 木村長門「戦争初心者なので勉強のためにくっつき虫しますね」

すっかり懐かれた。

  • 又兵衛「睨まれてるぞぉ」

さっき睨み合ってたものな。
木村長門「悪い男ではありません」
本当にそういう顔なだけなの……?

  • 団右衛門「団右衛門でござる」

団右衛門が団右衛門でござるって言いながら出てくるだけで面白いのずるい。こりゃ活躍を期待できる。若輩の大助にもきちんと名刺を差し出す団右衛門、マジビジネス武将マンの鑑。

幸村「キリシタン兵はやばいよ強いよ」

  • 又兵衛「勝てんの?」

幸村「こっちは関が原で苦しい思いをしたけど敵は本当の戦を知らない。この差はデカいよ」
即刻次のシーンで直接知らんでも知識の伝承はあるし、知ってる家康とかいるんだよって否定されてる。あと家康が何度も「関が原にいつまでもこだわってんじゃねえよ」って言ってるのが気になる。

戦争ハッスルジジイ

正信がこんな可愛いシーンが出てくるとか。ボケてしまった退役軍人が進軍ラッパ聞いたりとか銃を持ったらシャッキリしたみたいな話を思い出すなあ。

秀忠成長してる

こういう時にあきれ顔したりやめとけって家康に言えなかった秀忠が……ね。

家康「しゃなだ! またしゃなだか!」

しゃなだがトラウマになってるなあ。

真田丸落成!

幸村「ようやくこれで城持ちになった……」
兄上が岩櫃持った時からだいぶ経っていて差がついたなあ。飄々としていたけどそういうの気にしていたのか幸村。

「決まっているだろう……真田丸よ!」

そして突入するオープニング! 効果音付き! ぎぇええあああかっこいい!!! こうなるの番組開始直後に予測していたのに本編見入ってて忘れてた! そうだよこのドラマのタイトルは真田丸だったよ!
つまり真田丸はこれまで頑なにアバンタイトルを入れていなかったのではなくて、ここまでの44話まるまるすべてがアバンタイトルだったんだ! なんという! これまでの積み重ねが一気に来た……すごいなあ。
真田幸村なんて大坂の陣前後しか何してたのかよくわからない人じゃん、それを主人公にしてどうするの? と思ったら「ならば大坂の陣始まるまでをまるまるアバンタイトルにしちゃえばいいじゃん!」という並外れた発想。恐れ入りました。
音付きで「徳川家康 内野聖陽」の文字へ向かってかけていく深紅の騎馬隊! かっこいいなあ。

真田丸紀行

真田丸顕彰碑、新しいと思われたでしょうけど設置されたの去年なんですよね。

*1:OP前にドラマを入れること

*2:稲姫がデレたシーンの曲でもある

三国志外伝

三国志外伝

三国志外伝

宮城谷昌光先生の「三国志」の外伝です。宮城谷先生は歴史書を読み、歴史書に従って話を組み立て、歴史書の間を創作で埋める、という感じで小説を書いていく方と私は思っています。なので、小説と銘打たれているのですから本当はそういう読み方をしてはいけないのですが、私は歴史書の解説のように読んでしまいます。
そのせいで、信憑性が微妙な資料から話を引っ張ってきていると「ううむ……」となってしまうんです。でもこれは小説なんですから、面白ければ勝ちなんですよね。これは私の読み方が悪い。
三国志外伝は三国志本編では光があまり当たらなかった人物にスポットを当てて、個人個人のエピソードを描くオムニバス方式になっています。
王粲・韓遂許靖公孫度・呉祐・蔡琰(蔡文姫)・鄭玄・太史慈・趙岐・陳寿楊彪劉繇
太史慈の話なんかは、宮城谷先生の作風が良く出ていて面白かったですね。太史慈は郡と州が対立した時、先に上表した方が勝ちっぽい情勢になった時に郡の使者として、州の使者より後に出発したんですね。そして州の使者に追いついて「おいお前、上表する時に宛名に間違いがあると受け付けて貰えないそうなんだぜ。二人で確認しよう」と言って上表文を出させるとそれを切り裂きます! で「切り裂いたのはやり過ぎだった。このままだと俺もお前もお尋ね者なので、一緒に逃げようぜ」と言い、途中で自分だけ引き返して郡の上表文を提出して帰った、という話があるんです。宮城谷先生の太史慈は「気が進まない仕事だ」とか言いながらこれをやりとげるのですが、太史慈ってそんなタマですかね? 黄巾軍の包囲をだまくらかし抜けたとか、劉繇孫策に敗北・逃走した時に付き従わず太守を自称して兵を集めて孫策に対抗したとかそういう事跡を考えるとノリノリでやってますよねこれ。でも宮城谷先生の小説ではそういうふてぶてしいやつはあんまりいないので「気が進まない仕事だ」と上品なのです。韓遂とかも上品です。
宮城谷三国志はこれまでの宮城谷作品に比べるとはるかに史料が詳細に残っている時代なので、史料に振り回された感がありました。外伝で取り上げられた人たちは史料が少なめの人なので、宮城谷先生の上品な創作が羽ばたけて良かったと思います。

曹操墓の真相

曹操墓の真相

曹操墓の真相

2009年に曹操の墓が見つかった時から、発掘調査までのドキュメンタリーです。中国で発行された本の翻訳で、あの渡邉義浩先生の解説付き。
実際に発掘した人による本なので臨場感がありますね。曹操の墓らしいものが見つかったけど、遺跡は基本保護という政府の方針があり発掘ができない。しかしその間にも盗掘が進んでいく……どうする! みたいなストーリーから始まり、発掘物を調査して本当に曹操の墓なの? と検証していく考古学者(著者含む)に対し、歴史書を盾に「記録と違う」と否定をしてくる文学者や史学者。彼等への怒りみたいなものまで伝わってきます。
本文中で「これこれこうだから、曹操の墓と見ていいでしょう」という結論に対し、巻末の解説で渡邉義浩先生が「いやその判断はおかしい、なぜならば」とフォローが入っていたりして、曹操墓を色々な角度から見ることができます。あのニュースに興味を持った方はぜひ。
ところで曹操がたくさん偽墓を作ったという話は創作だったんですね。なのでこの墓発見騒動の時は「どうせ偽墓でしょ」みたいな態度を取ってしまっていました。史料に残っている話だと思い込んでいました。三国志はこういう思い込みがしばしばあるから恐ろしいです!

真田丸 第43話 「軍議」

先週の幸村「私は負ける気がしないのです!」
淀殿「それは!」
大野修理「我々が!」
又兵衛「どんなに!」
秀頼「団結しているのか!」
大蔵卿局「知っていて!」
明石掃部「言っているの!」
織田胡散く斎「だろうな!?」
今週の幸村「グワーッ!? グワーッ!? グワーッ!? グワーッ!? グワーッ!?

ほんとに軍議だけで終わったぜ。なのに面白かったぜ。
会議ドラマと言えば! シン・ゴジラ! じゃなくって、三谷幸喜の真骨頂です。すでに戦国会議ドラマとして映画「清須会議*1を手掛けてしかも面白かったという実績があります。
今回は豊臣方の作戦はどうするのかというまさに戦国会議回です!

正信「真田信繁大坂城に入ったから大坂方の真田の旗は策略じゃねえから気をつけろよ」

おやさしい正信さま……。

信之偉大過ぎる

真田丸の信之「信繁はこの時までずっと雌伏してたの! あいつの好きなようにさせてやりたい!」
迷惑かけまくられてるのにどんだけ優しいのか兄上。
史実の信之「じゃけん出奔して信繁の下に行った家臣は厳罰な〜」
ですよねー。

松「忘れちゃうからメモして!」

そういう内通関係っぽい話をメモしてあとで大変なことにならないですかね?!

家康「いつまで関が原を引きずっておるのじゃ」

引きずってるのは秀忠だけじゃなくて幸村もそうですよね。今回の作戦、よく聞くと関ヶ原の昌幸の作戦とおんなじ。伊達や上杉が14年前のままだと考えているのが痛い……。14年、幸村の時間は九度山で止まっていたんだなあ。

家康の七色本音

  • 「豊臣のために尽くした片桐さんを追い出すとか大坂どうなってるの?」
  • 「うちにつかない?」
  • 「ヤッター片桐殿が徳川についてくれた」
  • 「豊臣の情報流せよ」
  • 「豊臣に義理立てしてもいいよ」
  • 「片桐さん忠義の士だね!」
  • 「よくぞ教えてくれた!」

これ全部本音なんだろうなあ。だからしっかり人の心もつかむし。

ところで隣で吊り天井正純が「あっ片桐さん言っちゃったよ!」って顔してるの笑う。正純も徳川内部の差配しているからこの発言が何なのかきちんとわかってるんだなあ。

あの蔵での密会再び

されど淀殿は幸村にしなだれかからないし、幸村もそういうのに心動かすたちではない。そういうのがいいなあ、このドラマ。

淀殿「私の愛した人たちはこの世に未練を残して死にました」

幸村「太閤殿下は?」
淀殿「私の愛した人たちと言いました」
ええそりゃああんまりだよと思いましたが、秀吉は未練残しまくりだよなあ。それに後から触れますけど淀殿は幸村より大坂城のことを信じてますよね。幸村の策なんか信じられない信じられるのは大坂城のみ、だから籠城籠城言うのです。

大蔵卿局「兵糧なんかどうにでもなります」

ならないし。
織田有楽町「戦いは時の勢いを味方につけた方が勝ち。兄の桶狭間の戦いを思い出します」
お前その時ほんの子供だろ!
戦いをきちんとわかってない人が戦いをわかっている人の意見を聞かずに方針を決めるとか……。

またべ・ちょうすがめ・明石掃部毛利勝永「承知」幸村「不承知」

後詰め(援軍)なしの籠城とかダメなんですけど、それは小田原城を見ていた幸村には良くわかるし、本当は淀殿もわかっていいはずなんですけど、でも幸村の作戦にも無理があるよねえ。
大坂の兵は牢人で食い詰め者ですから、大軍統率経験のない五人衆では果たして兵が勝手に略奪に走るのを制御できるか? 別働隊を長駆動かすことがきちんとできるのか? 大坂夏の陣で足並みが揃わず又兵衛がああなったことを考えるとたぶんできない。京都を散々荒らすだけで戦略目的を果たせず汚名だけを稼ぐことにもなりかねない……。
又兵衛「話が壮大過ぎてわけわかんないからついていけない。籠城にする」バカだ!
毛利勝永「話が壮大過ぎて気に入った!」こいつもバカか!

大坂方上層部の裏工作

明石掃部・ちょうすがめ「裏工作されました」
幸村「ああもう……大坂方が勝てなきゃあなたたちの望みも叶わないんですよ?」
これからみんなで力を合わせて戦争をしようというのに戦争の勝敗以上に大事なことがある人だらけだ!

初は菓子を食う

これ「江」のリスペクト? リスペクトするところがある大河だったっけ? しかし初は別にスパイしに行った感じでもないのにべらべら大坂方の情報を流してしまう淀殿……悪気はないんだろうけどちょっと何も知らなさ過ぎでしょう。

木村長門「籠城が最後の希望だ!」

木村長門「ガチで大坂城が最後の希望だった。まずは野戦行こうぜ」
魔法使いライダー即落ち!

またべ「大坂には死にに来ました」

幸村「死にたければ勝手に死んでくれ」
あんなに強気にブイブイ言ってた又兵衛が一番弱気だったの笑うし。

幸村「私は本当に、負ける気がしないのです!」(勝てるとは言っていない)

別に幸村が騙そうとしているのではなくて、大戦の戦術眼がきちんとしてなくてそう言っている可能性もある。

有楽町「うっせ食い詰め牢人どもはおとなしく俺たちの言う通りにしておけばいいんだよ!」

牢人を用いたくないなら雇わなければ良いんだよなあ……。雇わないと戦争できないと言うなら戦争にならないようにすれば良かったんですよ!

大野修理「うるっせ有楽町バーカ! 決めるのは秀頼様なんだよ!」

そして作戦は野戦に決まった! やったぜ今年の大坂の陣大野修理のファインプレーで大坂方の勝利に決まったぜ! これで勝つる!

織田有楽町「お前のママに言いつけるからな!」大野修理「好きにしなよ」

からの

淀殿「作戦は籠城。いいね?」秀頼「アッハイ」

上げて落とす! たまらんねジェットコースター三谷脚本。大野修理は母親を撥ねつけたのに秀頼には無理でしたという対比……。
淀殿は真田しか信用できないとか言って幸村の策を採らないんだもの。幸村も信用してないじゃない。淀殿が信用しているのは大坂城ですよ。大坂城イコール秀吉ですよ。今回秀吉を愛していなかったみたいなことを言っていたけど後から本当は秀吉を愛していましたみたいな話になるのかなあ。
この話を幸村が聞かされた時に久しぶりに秀吉のテーマが掛かったのがすごく不穏ですし、幸村は実は家康だけじゃなくて淀殿の後ろにいる秀吉とも戦わないといけない感じに陥っているのではないでしょうか……。

幸村「なんで大坂城に来たのか自分でもわかんね」

そりゃそうですよね。幸村に変身するシーンのあの回想シーンの異様なランダムぶり。あのランダムな昂ぶりに押されてここにいるのですから、わかる方がおかしいし、わかったような気になって言語化すると「あっあの小賢しい源次郎だ」ってなるので、幸村になった今はわからないはわからないでそのまま口に出せるのです。

なんか真田丸大坂の陣は勝てそうな雰囲気を時々出すんですけど大坂方は全力を尽くしたのに数量で勝てませんでしたねダメでしたねとはならず大坂方にダメなところが見えてきてやっぱり大坂方勝てませんわこれってなるところが何と言うか歴史に誠実な感じで見てる方も納得が行く感じでいいですね。主人公側は超頑張ったのになんか超自然的な力で負けちゃったね……みたいな話よりずっと好みです。

*1:大泉洋が秀吉、寺島さんが黒田官兵衛でした

真田丸 第41話 「入城」

やはり前回(前々回ラスト?)でこのドラマのリアリティラインは変動しましたね。外連味たっぷりの信繁改め幸村の活躍がががが!
荒唐無稽感が出てきたけど楽しい! いやだからこそ楽しいのでしょうか。よく大河ドラマが「史実と違う!*1」と文句言われますが、それってその大河がつまんないからなんですよね。「変な創作してつまらないくらいなら史実に忠実にやれよ!」がより正確。楽しいのが面白いのが第一。真田丸は舵を講談に切り替えても楽しい。

  • きり「苦労大好き!」

どんどん発言がアヴァンギャルドになるな……イキイキしちゃってるし、前回の月のシーンはやっぱりそういうこと? 春ちゃんからきりちゃんは認められたし、もう正式にそういう関係になったし、そういう関係になっても問題ない状態になったと思っていい?

  • 家康「秀頼もおとなしくしてれば大名としていられたのに。なんで?」

命が一番で伊賀越えで泣いてた神君には大坂城メンバーの思考はまったくわからなくてきっと恐怖するんだろうなあと今から楽しみです。誰もが命が一番だと思ったら大間違い

  • 信之真田家、嫡男問題安泰

昔心を開かない稲姫の手をとって励ましたおこうさんの誠意が通じて今度は稲姫がおこうさんの手を取りました。ええ話や。信之も信繁も女性問題はなんかふにゃふにゃしてるなあと思いましたが奥さまズがしっかりしていたので両方解決してしまいましたね。頭が上がらないですよ。
信吉については母親が誰なのか諸説あるそうで、

  1. 稲姫
  2. 侍女説
  3. 信之のいとこ説

信之のいとこであるおこうさんが侍女となり、信吉が稲姫の養子となったことで全部の説をカバーしてしまいました。真田丸脚本はこういうのがやたらうまい。

  • 信之「今回の戦は大坂方に目立った将はいないし、籠城戦でじわじわ終わるね。息子の戦争チュートリアルにもってこいじゃないですか」

あっ昌幸パパ上が何回もしでかした楽観論読み違いですね……。でもまさか自分の弟がはっちゃけるとは思わないか。弟こないだ会った時には別に赦免とかいいですとか言い出していたしね。せっかく安泰になりかけた真田家を弟がかき乱す!
ところで稲姫大坂の陣を終えて帰ってきた信吉信政に「えー二人とも帰ってきちゃったの。二人いるんだから一人くらい討ち死にして徳川家に忠義を見せても良かったのに」とか言ったという逸話があります。こわすぎる。

  • 「立場が人を育てる」

立場で育った人は信之で、今から立場を作って大きく成長しようとしているのが幸村ですね。そのために色々ハッタリもかますんですね。

信繁を暗殺現場に向かわせず押しとどめるために使われた雁金踊りが今度は逆転して脱出に使われた! 春ちゃんこのために練習したんだなあ。 陽気な結び雁金の曲の裏で不穏なBGMがたまらない。
あの脱出シーン、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック*2でトラップ一家が脱出を図るシーンのパロディなんですねー。知らなかった。知ってる人には歌いながら退出することでわかりますけど、知らない人でもただ下がっていいはずの佐助がニンジャ退出をするので「あっなんかこの退出には意味があるんだな」とわかるようになってるんですね。
「これは米のとぎ汁! 謀られた!」
米のとぎ汁を全部飲んでしまえばこういう発覚はしなかったわけで、これはこういう発覚をさせる意図があったに違いないです。酔い潰してしまわなかったことに意味はあるはず。長兵衛さんはグルではないんでしょうね。なぜならグルにしたら長兵衛さんら村の人たちも罪人として裁かれることになる。巻き込みたくないので策は知らせない。だから長兵衛さんがいるところで米のとぎ汁が発覚することでグルではないことを監視役にわからせる。
それはそうとして真田紐で潤った九度山村は結構幸村に恩義があるし、九兵衛が「徳川やっちゃってくださいよ〜」とか言い出すくらいには幸村には徳川に遺恨があることを知っているし、幸村にはまだ「やる気」があることを知っている。すると何も知らないながら何かを悟っていてことが起きたら機転でサポートしてくれるんですね。
長兵衛「ここは吉野山。 寺は山ほどあります 」
何も言えねえ。
長兵衛と幸村が遠隔で頭下げ合うの良いですよね……。

幸村「ダメ!」
幸村普段は梅ちゃんのこと気にしてる雰囲気ないのに急にこういうの出してくるんだよな。あと幸村はこの戦勝てると思ってないんだよなあたぶん。

  • はっとり

「幸村がハッタリならこちらは……はっとり!」
はっとりがハッタリで押し通って逃げて行った。その時の幸村の顔。内記の構えかっこよかった。

「豊臣には誠心誠意仕えてきた」とか言いながら入城からして扮装だしパパ上の手柄は自分のものにして盛り盛りの虚構だらけ。
講談(おはなし)の主人公真田幸村と史実の存在真田信繁。主人公が講談の幸村に切り替わったんだよ、ということなのでしょうか。
「参るぞ、きり」の時のきりの顔メロメロでしたね……。
ところで、大坂城に入った幸村が白髪で歯抜けで腰が曲がっていて、とする伝承があるんですね。それを今回拾ったんでしょう。あの姿、真田昌幸肖像画に似ていますが、それよりも内田裕也に似ている気がします。杖の形も同じだし……。
ロックモンロール!

  • 修理の顔も立てよう!

大野修理「ここの兵10万は全部真田さんの兵だと思ってくださいね」
幸村「兵糧は?」
大野修理「たくさんあるよ」
幸村(数字出してないからこりゃアカンなあ)
幸村「(数字を出して)兵糧のマネジメントがなってないでござりますな」
秀頼「おーそうか幸村すげえ、幸村が来てくれて良かったなー修理」
大野修理(前線指揮官として呼んだだけなのに何全体のマネジメントに口出ししてんのこいつ……)
ここで幸村はいきなり2つのミスをしていますね。
まず分限を超えた話をいきなり始めたりしたらそりゃ嫌がられますよね。
次に、兵糧の話をされて、数字も出せないのに大丈夫とか言う大野修理はダメなんですが、だからと言って、いやだからこそ彼のプライドには気を遣わないと……。

大谷刑部なら事前に大野修理に兵糧の話をしておいて大野修理の提案として大野修理の口から言わせたりしたでしょうに。大坂城で幸村の発言力を高めるために*3それができないのだとしても、言い切らずに途中で「大野殿はどう思われます」とか水を向ければ良かったのに。
三成は反面教師にしなくちゃ! なにやってんの!

それはそうと、三成はテンプレ三成っぽく出て来てあの三成だったので、テンプレ大野修理っぽく出てきた大野修理もテンプレ大野修理ではない可能性がありますね。今後注目ですね。

あと大蔵卿局が「みんないなくなってしまった」的なことを言いましたがだからこそ幸村がハッタリかませるという部分もあるでしょうね。

  • 信繁「お茶々様」淀殿「源次郎」

ここまで信繁じゃなくて幸村なんだよーって名簿書き直したりしてハッタリかましてきたのに淀殿にお茶々様言って源次郎言われる幸村。ほんと自然。この二人だけあの頃のまま。

*1:「史実と違う!」と「事実と違う!」の意味が違うのがまためんどくさいんだよなあ

*2:アニメ「ハウス名作劇場 トラップ一家物語」と同じ題材

*3:ハッタリもそのためにやってるわけですしね