三国志外伝

三国志外伝

三国志外伝

宮城谷昌光先生の「三国志」の外伝です。宮城谷先生は歴史書を読み、歴史書に従って話を組み立て、歴史書の間を創作で埋める、という感じで小説を書いていく方と私は思っています。なので、小説と銘打たれているのですから本当はそういう読み方をしてはいけないのですが、私は歴史書の解説のように読んでしまいます。
そのせいで、信憑性が微妙な資料から話を引っ張ってきていると「ううむ……」となってしまうんです。でもこれは小説なんですから、面白ければ勝ちなんですよね。これは私の読み方が悪い。
三国志外伝は三国志本編では光があまり当たらなかった人物にスポットを当てて、個人個人のエピソードを描くオムニバス方式になっています。
王粲・韓遂許靖公孫度・呉祐・蔡琰(蔡文姫)・鄭玄・太史慈・趙岐・陳寿楊彪劉繇
太史慈の話なんかは、宮城谷先生の作風が良く出ていて面白かったですね。太史慈は郡と州が対立した時、先に上表した方が勝ちっぽい情勢になった時に郡の使者として、州の使者より後に出発したんですね。そして州の使者に追いついて「おいお前、上表する時に宛名に間違いがあると受け付けて貰えないそうなんだぜ。二人で確認しよう」と言って上表文を出させるとそれを切り裂きます! で「切り裂いたのはやり過ぎだった。このままだと俺もお前もお尋ね者なので、一緒に逃げようぜ」と言い、途中で自分だけ引き返して郡の上表文を提出して帰った、という話があるんです。宮城谷先生の太史慈は「気が進まない仕事だ」とか言いながらこれをやりとげるのですが、太史慈ってそんなタマですかね? 黄巾軍の包囲をだまくらかし抜けたとか、劉繇孫策に敗北・逃走した時に付き従わず太守を自称して兵を集めて孫策に対抗したとかそういう事跡を考えるとノリノリでやってますよねこれ。でも宮城谷先生の小説ではそういうふてぶてしいやつはあんまりいないので「気が進まない仕事だ」と上品なのです。韓遂とかも上品です。
宮城谷三国志はこれまでの宮城谷作品に比べるとはるかに史料が詳細に残っている時代なので、史料に振り回された感がありました。外伝で取り上げられた人たちは史料が少なめの人なので、宮城谷先生の上品な創作が羽ばたけて良かったと思います。