迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの 読みました

発売日に買っていて、本当は早く読みたかったんですが友人に「俺が貸したバッカーノさっさと読め!!!」と脅迫されてそっちを先に読んでいたのです。バッカーノは鈍行篇を読んだ後の特急篇が面白かったです。鈍行篇は「溜め」で、それを別のサイドから見た解決篇たる特急篇は面白いわけです。
さて本題。

迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (GA文庫)

迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (GA文庫)

舞台は現代日本は京都。大地震により口を開けた大洞窟の中には未知の生物が蠢いていた! その生物からは貴重な物質が採取できるため、腕に覚えがある者はその迷宮に集まり、「探索者」と呼ばれ、怪物の退治と迷宮の探索を行うのでした、というお話。現代日本で、Wiz を! という意欲作です。

何と言うんですかね、淡々としているんですよね。勿論、良い意味で。その淡々としたところが読者を驚かせることに繋がるわけです。どういうことかというと、主人公と親しい登場人物。自信に実力も兼ね備わっている。頭もいい。しばしば主人公と対比的に話に登場してくる。そういう人って普通死なないじゃないですか。死ぬとしてもあっさりとは死なない。何か劇的な死に方とかするものじゃないですか。でもあっさり死んじゃう。全然読者の予想外のところで。
でもそういうところなんですよねこの話に登場する迷宮は。それでいて、その迷宮の外側は普通に現代日本なわけで。経済活動も普通にあって、迷宮の周りで商売をしている人でもどこか探索者達を理解できないところは存在して。迷宮と関わり合いのない人は尚更で。その隔絶がありありと感じられるのはやっぱり舞台が現代日本で、ちゃんとそれぞれの登場人物の考え方がしっかり現代日本として描写されているからです。舞台がファンタジーだったりすると、探索者の立場の人には結構な割合で尊敬したり応援したりする人達がいるわけじゃないですか。そういうの、ほとんどないですからね。私だって友人が急に生死を賭けて兼ね稼ぎに行くとか言い出したらそりゃ理解できませんし止めますもの。
そういうところが私にはぐっとくるものがあります。そこにはフィクションを制御するリアルがある。
そういう点で言うと、主人公達の武装もリアルで理にかなってるんですよね。洞窟の中の怪物は野生の動物のように牙や爪で襲いかかってきたり、知能のある者は武器で攻撃してくるのですが、対して主人公達が備える防具は要所に金属板を取り付けたツナギにヘルメット。ヘルメットからはツナギと同じ、防弾チョッキに使われる布がサイドや首筋に伸びています。そして武器は鉄製の剣。ちょっと見ではいかにも頼りなく思えます。命が掛かってるのにプレートメイルみたいな物は用意しないのか? 何で拳銃は使わない?
作中では「日本だから銃は御法度」と言われていましたが、拳銃なんてそんな命中精度の高い物ではないですし、乱戦に撃ち込むこともできません(乱戦に射撃武器を撃ち込んではいけないのは TRPGer なら全員が知っているはずのこと!)。弾の補充も考えなくてはいけませんし、洞窟内でどう跳弾するかもわかりません。そう考えると、鉄剣も理にかなっています。防具の方も、まずプレートメイルなんかは「現代日本で?」という壁があり、それを乗り越えても高熱の硫化水素を吐き出す怪物や素早い身のこなしで急所を狙ってくる怪物の存在が立ちはだかります。そうするとがちがちに固めるよりも要点だけ強化したツナギで機動性を確保した方が良さそうなんですよね。
そういうのが私の心をくすぐってなりません。
ところで「石の中にいる」がなくてもテレポーターって怖くないですか!?
私がお気に入りのシーンは239ページからの第三週 十二月十五日 十三時四十分 今泉博1のシーンです。
お? ああ、そうなのか。でもこれなら。ああやっぱり! でも! ひょっとして……。ああ、あ、あー。という感じで。何のことやらわからないと思いますけど、私と趣味が合う方でしたら読んで損はないと思いますので、是非1巻とまとめて。

迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)

迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)