外堀から埋める三国志〜「歴史地図で読み解く三国志
今日はこの本「歴史地図で読み解く三国志」を読みました。
結論から言うとこれはよい三国志本ですね。
歴史地図で読み解く、とあるのは、三国志の舞台の外側、辺境の地に陣取る異民族の話をかなりじっくりとしているところにあらわれています。
三国志の解説本は数多く出ていますが中国の外に目を向けているものはそう多くないです。もっとも、三国志の話をするのにここまで異民族の話を詳しくする必要はあるのかな、といった疑問はあるんですけど。
かなり詳細に、どう関わってきたか書かれているんですけど、結局三国時代には「これら異民族との合従連衡がありました」「これら異民族に対し、文明を持つ漢民族は団結して当たらないとならないという考え方がありました。そのため、漢民族を団結させることができる人物のところに人が集まりました」(筆者意訳)といった面でしか、関わってきていないように読めます。
異民族の話以外では地図は補助的に用いられるだけになっていまして、タイトルのことを考えますとやはり異民族話がこの本の中核をなしていると言えましょう。
また、この本の特徴としまして、三国時代以前の話も詳しく書かれている、ということも挙げられます。
三国時代以前に、こういうことがあったので、この事件が三国時代にはこういう影響を及ぼしたのです、といったことが詳しいです。宦官や外戚がどうして権力を握ることができたのか、などなど。
中国の周辺の話と、三国時代以前の中国の背景と、三国志の周辺の事情に詳しいのがこの本のよいところでしょう。三国志の外枠を固めることができます。実際の三国時代の話はわりとあっさりめに書かれていますが、これは他の本でも扱っていることですからね。
そして、物語である三国志「三国志演義」と、歴史書であるいわゆる正史三国志をしっかり分けて書いているのも好感が持てます。いや、結構あるんですよ。どちらのことをメインにして書いているのかはっきりしていないでどんどん書き進めていってしまっているものとか。それならまだいいんですけど、酷いものになると注意書きもなく混在させてしまっていたりとか。
この本とこの本「図解雑学 三国志」を組み合わせて読めば欠点を補って非常にいいと思います。「図解雑学 三国志」についてはまたいずれ。