真田丸 第40話 「幸村」(10月9日放送分)

  • おや……? ドラマのリアリティラインが……?

真田丸は講談軍記物の類からは距離を取り、記録や最新の研究に忠実に、創作はその合間を縫って行われていました。講談などで荒唐無稽な活躍をしがちな真田家をテーマにとりながらも、です。
つまり真田丸が行った創作が実際にあったとしても残る記録は変わらない。現代に残る記録に影響を及ぼさない範囲での創作が行われていました。たとえば真田丸の創作によって信繁が氏政を説得しに行きましたが、これは密使なのでそれが信繁の手柄・功績にはなっておらず記録に残らず実際の軍使はナントカ官兵衛でありその功績になって記録に残っている、といったような(こういう、創作が完全に記録の従となるやり方、私大好きです)。
だからこそ主人公の信繁が実際は何もしていないマン*1になってしまっていたわけですが、それが信繁が再度立つ理由となり、信繁が幸村となるきっかけとなり、信繁が講談での名前の幸村になることによってドラマのリアリティラインも記録重視路線から講談寄りへとずれていくのではないでしょうか。
と書きたいのですが、本当は前回の明石掃部の登場がラインぶれのタイミングだったような気もしまして。幸村誕生のタイミングの方がすっきりするんですけど、あの明石掃部の登場は異様過ぎましたし、その後幸村誕生までに異様なキャラの清韓は出てくるわ片桐さんは無茶苦茶するわ大野兄は講談で見まくった知ってるなるほどキャラだわ大蔵卿局の演技は過剰になってるわでスイッチは先週最後じゃないのかしらという気がしてなりません。

  • 片桐さん「話だけでも聞いてもらえるとありがたいな」から始まる片桐さん胃痛フィーバー

話だけでは終わらせない気満々ですけどね。真田が絡んでないのでダイナミックに省いた十余年を信繁に説明する体で視聴者にも説明するスタイル、うまい。
ここで片桐さんが死ぬほど苦労するから初登場から片桐さんが胃痛キャラだった時「ああー」ってなりましたね。
しかし片桐さんそりゃ排斥されるよ……という感はありありつつ、でも鐘銘事件というか徳川との関係についてはまあ誰が何やっても鐘銘以外のところで難癖付けられて戦になったんじゃないかなあという気がするので片桐さんはアカンかったけどでもそんなに気にしなくてもいいじゃないと思います。石田治部や大谷刑部がいてダメだった大坂城、できる人は関ヶ原で居なくなってしまったので最早対応できる人はいないですよ。そもそも交渉窓口をもう一本(大蔵卿局)立ててる時点で混乱するに決まってるので……。
他の可能性としては……真田丸本多正純は本気でアレなので、一回鐘銘の修正をさせて「ああ修正させたのねOKOK」と中身を見ないでOKだして、後から「国家安康とか書いてある……大御所様に叱られる……なんとかしないと!」と気付いて責任押しつけしたというセンもありそうですが!
それはそれとして豊臣内で信じられなかったのは捏造しでかしたからなので仕方ないよね。嘘ついときながら「そんなことを私がすると思うか!」って言っても何の効果もないというか。
しかし片桐さんの自分は退転したのにお前は入城して戦ってねって結構外道発言な気もします! あと片桐さんが「さらにことを悪い方へと転がしてしまった」と言った時に信繁が「さらにですか……」と半分あきれ顔で言ってたのつらい。

治部と刑部がいたころはあんなに書類だらけだったのに……もはや政治の中心はここではないとよくわかりますね。

  • 鐘銘事件について

本名をそのまま使うと失礼というのが常識だったのですが、どうもこの時期は本名をそのまま呼ぶのが敬意を表すことになっていたようです。真田丸歴史考証の丸島さんがおっしゃっていました。すると……なぜかほかの大名が官職で呼ばれている中政宗呼ばわりされることが多かった伊達政宗は敬意を集めていたのでしょうか? 政宗だけ政宗呼ばわりされてるウケルーとか思っていたので残念です*2。残念?

  • 片桐さんの排斥は徳川との手切れ

片桐さんは豊臣の対徳川窓口だったわけで、その人を追い出しておいて代わりの人を据えないとなれば「もう徳川とは話をする気はないです」と思われて仕方ないのです。他家との外交窓口となる人を取次と言いますが、取次を処分するということは大きな外交問題となるのです。現代で言えば相手国に赴任している大使をいきなり召還・処分して後任がこないようなもので、こんなの相手国から怒りを買うにきまっているのです。

  • きり「行けよ! お前何もやってないじゃん。やり切れよ。あとお前大好き!」

きり「ずっとパパ上とか秀吉に振り回されて今回までの40回誰が主役かわからない状態だったろ! お前最終回までそれでいいのか! そんな大河見たことないよ! 何のために生まれて何のために生きるのかわからないまま終わる、そんなのは嫌だろ! 一花咲かせろよ!」
信繁「鬱陶しいんだよ! 知ってるよ! 知ってた! 自分にもそう問いかけてた!」
信繁「でも効いたぜ……」
あっ、ようやくきりちゃんが真田丸のヒロインになった。「あとお前大好き」の部分は信繁スルーしやがったと思いましたがでもその後の意味深な月の映像。何かあったはず。
明石掃部に即座に言った「お断りいたす」、自分の境遇を仕方ないと思い分別臭く納得して見せる態度、一面賢くはありますけど、その賢い感じを引っ掻き回せるのはきりちゃんだけでした。
結局信繁のこと一番よく見ていて信繁が一番何でも言える相手はきりちゃんだったんですね。ようやく気付いたのか信繁。でもまあ、きりちゃんずっとうざかったしなあ。

  • 真田左衛門佐最終フォーム幸村信繁爆誕

ベルの静かな音を背に、今まで信繁と関わってきた人たちの思いが、生き様が、押し寄せる押し寄せる。取り留めもなく押し寄せる!
「わしのようにはなるな」を呪いだ呪いだと私は言っておりましたが、アレですね、生きることは呪いを受けることですね。それまでの人生の積み重ねがそれからの人生を縛る。当然のことだった。でも、これだけの呪いを、いやさ想いを受けたのだから、そりゃ信繁はハイパー化して戦国最後の名将真田幸村になっても不思議はないですね!
そんなこんなで、仮面ライダーで最終形態になる回とか、Gガンダムでドモンが明鏡止水の境地に達する(最終の機体ゴッドガンダムへの乗り換えのきっかけとなる)回を思い出しました。明らかにこれまでの経験・蓄積が最後のパワーアップに繋がるという演出ですよ。そうにしか見えません。
前々回に「流れでこうなってるだけ」と言いましたけど、流れでどうかなるのをやめよう、傍観者はやめよう、主体的に動こう! ということで信繁が幸村になるんですよ!

  • 信繁「里芋全部喰っちゃうからな〜」

大助「えっこの先の分も喰っちゃっていいの?」
信繁「ええんやで」
この後大助は一瞬「?」な表情を浮かべていましたが、すぐに何事なのか気付きました。敏い!

  • 信繁「くるくるシャッフルで新しい俺の名前決めような?」

大助「そんな大事なことくじで決めていいの?」
信繁「大事なことだからくじで決めるんだぜ」
犬伏でパパ上の両方朱のくじは信幸に「こんなことはもうやめましょう」と言われたのにここではくじ。パパ上の大ばくち打ち戦国脳を取り入れるぜってことなんですかね。

  • 信繁「村。村の字も入れちゃったの?」

大助「やり直しましょう」
信繁「いやこれでいい……真田村幸……真田村上幸平……これも全部徳川家康って奴の仕業なんだ」
そんなのは置いておいて、村幸としかけたのに幸村としたのは、鐘銘事件のところで「文字を逆にして呪いを祝いに変えた」って言ってたのと関連あるんでしょうか。これまでの人生を詰めた壺から取り出した文字をひっくり返して、これからは大逆転人生だぜって意気込みでしょうか。
なお、信繁が真田幸村と名乗ったという確たる証拠はありません。真田丸はこれまで記録・学説重視できたので幸村は名乗らないと思っていましたがリアリティラインの変更で真田丸は講談ワールドになっています。だから幸村を名乗るし、きっと大活躍するはずです。
なお村正銘の刀が徳川に祟りをなす妖刀でありその力を借りるために幸村とした、というのは作り話です。まあそもそも幸村の名乗り自体作り話っぽいので当然ですが。村正は家康地元の三河一帯のブランドなので家康の周りにある刃物が村正ばっかりだったって話みたいですよ。

*1:だって信繁に関する記録って大坂の陣までほとんどないし

*2:もっとも、政宗は自分の名前が好きみたいで政宗でーすみたいに言って回った感じがあるのでそのせいの可能性も大ですが