断り書きについて・秩石について・取り扱う項目について

※「お勉強」タグが付いている記事は発行予定の本を執筆するにあたっての私の勉強メモです。読みづらい、わかりづらい点、認識誤りなどがあるかも知れません。認識誤りについては指摘をしていただけると大変うれしいです。

断り書きについて

何を調べたらいいのかの下調べをしていった結論としては……。
結局、三国志に志(制度についての記録)がないので、はっきりと三国時代の官職について「こうだ!」と書けなさそう(確実に裏付けする資料がない)ということがわかりました。
後漢書の志をベースにして、色々三国志から情報を引っ張り出して付け足し、場合により晋書も見て「たぶんこう」と言うのが限界。むう、三国志にキャラ萌えしていた頃は気にならなかった三国志の欠点に牙を剥かれたぞ。
後漢にしても、時代によって制度は変わるので、「後漢末ではたぶんこう」と言うのが少なくとも私にとっては限界であろう、と見切りを付けました(そして、おそらくそれは時代が近い三国の官職と似たものとなるでしょう)。
というお断りを本の最初に書くことになるかな。そしてこのお断りを最初に書く羽目になるから(そういうクオリティのものしか作れない限界があるから)三国時代の官職を紹介する本が見当たらなかったんだな。なるほど。

まずは後漢書の志、百官パートを読み進めていきますか……。

秩石について

昨日書いていた二千石とか比二千石とか中二千石とかを秩石と呼びます。
二千石というのは給料として支給される(はずの)穀物の量なんですが、これは官の階級として使用されており、実際に二千石の支給を受けていたわけではないらしい。そして半分を穀物で受け取り、残りを銭で受け取る。
じゃあ実際にどれだけもらっていたかというと『後漢書』「志第二十八 百官五」にある。

  • 万石:大将軍・上公・三公

月給350斛(斛≒石)→年間4200斛

  • 中二千石:九卿・河南尹・太子太傅

180斛→2160斛

  • 二千石:執金吾・大長秋・太子少傅・将作大匠・度遼将軍・郡太守・国相・州牧

120斛→1440斛

  • 比二千石:中郎将・校尉・都尉 

100斛→1200斛

  • 千石:尚書令・県令・三公の長史(副官)

80斛→960斛

  • 比千石:九卿の丞(副官)・謁者僕射

「志第二十八 百官五」に記述がない。光武帝紀注に記述があるらしく、それによれば80斛→960斛

  • 六百石:州刺史・諸令・博士祭酒・従事中郎・北軍中候・度遼将軍の長史、司馬

70斛→840斛

  • 比六百石:博士・議郎・中郎

50斛→600斛

  • 四百石小県県長:洛陽県丞・県尉

45斛→540斛

  • 比四百石:侍郎、公府東西曹掾・中黄門

40→480斛

  • 三百石:小県県長・諸令の丞

40斛→480斛

  • 比三百石:郎中・羽林郎

37斛→444斛

  • 二百石:諸令の丞

30斛→360斛

  • 比二百石:節從虎賁

27斛→324斛

  • 百石州:従事・郡督郵、功曹

16斛→192斛

  • 斗食

11斛→132斛

  • 左史

8斛→96斛

随分タイトルと実際の給料に開きがあるのね。
このランクにより宮廷での衣服や冠、乗り物や従者、誰に礼をするかなどの差別化が存在する。

取り扱う項目について

後漢書』「志第二十四 百官一」を読むと、(前)漢の制度は秦の制度をほぼ継承した、光武帝が中興すると、節約して合理化した。とあるので、秦から後漢までは大体の構成は同じと考えて差し支えなさそう。
で、魏の官職とかをつらつら見ていくと後漢とかなり近い感じがあるので、魏も後漢の制度を大体継承していると考えて致命的な間違いはないと考えました。
なので、後漢書百官志を読んで後漢の官制を確認して取り扱う項目とし、そこに三国の独自の制度を付け加えれば目的は果たせると思われます。問題は「三国の独自の制度」をどう拾い上げるか。三国志に「志」はないので(あるならそもそもこの作業要らないし)、何らかの手が必要。全部読み直して拾うのは現実的ではないし、後漢書百官志注の魏略とかのパートを読むだけでは貧弱だし。三国の高官の官職を調べて、独自のものや職掌を超えて行動をしていそうなところを調べる感じ?