巫女さんは乙女でなくてはならぬ?

山と積まれた未消化ゲームもなんのその、再起動しまくるパネリーナを横に、昨日もWeb上をぶらぶらしていたのですが、ふっと魔がさしてはてなキーワード巫女を開き、とりあえずそのページにある(最近巫女という言葉を使った)ページをバカスカ開いていったところ、
http://d.hatena.ne.jp/Agoo/20040517#p3
こちらへたどり着きました。
そして、そこから
http://www.din.or.jp/~eup/denpa/miko/define02.html小春亭
ここへ。
巫女さんは処女でなくてはならない、そうだろうか? いや、実は巫女さんは処女じゃなくても良いのだ――
というお話がこちらに載っています。
なんだとう!
神聖ニシテ犯ス冒スベカラズの巫女さんに対してなんてエロいことを言うのだ!
巫女さんは処女じゃないとダメだ! ダメだダメだダメだ! はっきり言って巫女さんはエロ禁止だ! 処女じゃないとダメというか恋愛すら禁忌だ! 禁止だ! 巫女さんは肉体的にだけでなく精神的にも処女でなければならぬ!
でも巫女さんとて年頃の女の子! 恋したい! いや、恋してしまう!
年相応に火照る体が……しかし巫女としての務めがその身を縛って……
ってこれではよほど私のほうがエロいみたいじゃないですか! 心外な!
というジョークはさておき*1、この話とは別の視点でこの話をしてもいいと思うのでちょっと考えたことをずらっと書いてみます。
巫女は処女じゃなくてはいけないのか? そうです、処女でなくてはいけないのです。
鎌倉時代の通海という僧侶が書いた書物*2

「神は夜ごとに斎宮のもとにお通いになるので、朝には斎宮の御しとねの
 下に蛇の鱗が落ちているという人もいるが、本当かどうかは分からない。」

斎宮*3は巫女として伊勢の神(=天照大御神)に仕える女性の皇族のこと。
御しとねとは寝床のこと。
蛇とは太陽神をさします。つまり天照大御神ですね。
その蛇が夜な夜な斎宮のところへ通っているというと、斎宮のところへ夜な夜な天照大御神が通いに来ているということになります。
つまり、この場合斎宮(=巫女)は神の妻であるということになります。
本当かどうかはわからない、というエクスキューズは付いていますが、そう信じていた人がいたであろうことはまず間違いないでしょう。
待て、天照大御神は女性神じゃないのか、何で斎宮のところに夜這いに行くのか、というお話はちょっと今回の筋から離れるのでまた別の機会に。
というわけで巫女は神の妻となるという役目を持っているので、他の存在の妻であってはならないのです。そういう意味合いで巫女は処女じゃないとならない、ということになったのでしょう。
参考までに、神話の中では男性神は複数の妻を持つことはありますが*4、女性神が複数の夫を持つことはないようです*5
穢れという面から神道を観測するのは非常に正しい姿勢というか、穢れ祓えは神道の中でも最も重要な位置を占めていると言っていいくらいのことなので至極当然のことなのですが、別の可能性があってもいいかなと思ってこの文章を書きました。別に最初に挙げたところの意見を否定するつもりはありません。そう書かれているように、穢れ祓えを軸にして考えるなら至極正しいと思います。
実際、上記の私の説では巫女さんは処女! と結論が出たのですが、戦国時代には歩き巫女と言って諸国を旅しながら遊女をやっていた巫女もいるわけですし。ちなみに武田信玄はこれを組織化して情報収集をさせていたそうです。
すげえ! 信玄はやっぱりすげえや! 知略抜群! 私が遭遇してたら情報だだ漏れですよ! むしろ巫女さんの気を引くためにあることないこと何でも言うね! ……ん?
まあ結局は日本ならではの多様性というか、影響の受けやすさというか、いい加減さというか、ファジー具合というか、巫女さんにも色々居るのだな、処女じゃなくてはいけない巫女さんも居ればそうでなくてもいいどころか積極的に春を鬻ぐ巫女さんもいると、ということになるんですけど。
ちなみに、私は巫女は処女でなくてはいけないというのはキリスト教の影響*6もあるんじゃないかなあとも思ってるんですけどね。
戦国時代に巫女は遊女でもありました→キリスト教伝来→現在巫女は処女でなくてはならないという話がある
と考えると仏教の影響と考えるよりも時系列的にぴったりきますし。それと仏教は当初は穢れ云々ではなく「女人は悟りの妨げになるので一切ダメ」というスタンスを取っていたので、こちらからの影響を受けると処女云々の前に女性がシャットアウトされるでしょう。

極端な例だと、高野山熊野三山を近くに持ち、神仏習合の影響を強く受けていた奈良県の玉置神社では、やはり女性が不浄のものとされたため、現在でも例祭では男性の神職が巫女の衣装を着て「弓神楽」という舞楽を奉納するという珍しいものになっていたりする。

とあるように。
まあこれは牽強付会以外の何物でもないのですが、まあ可能性として。
ちなみに神前結婚式というのは実はキリスト教のチャペルでの結婚式にヒントを得て明治時代に作られたものですし。
関係ないか。でもまあキリスト教神道に影響を与えることもあるんですよという例として。

*1:確認しておきますが、本当にジョークです

*2:書名は確認取れ次第書きます

*3:斎王とも

*4:大国主神など

*5:と言っても、私が知る限り、の域を出ません。複数の夫を持つ女性神をご存知の方はぜひ教えてください。

*6:汝、姦淫すべからず