ガンダム AGE 見てます

ガンダム AGE に関してはひどいひどい言いながら結局1話以外全部見ているわけでお前結局 AGE 好きなんじゃないのと言われたらなかなか反論は難しい感じ。アイドルマスターのアニメまだ全部見てないのになんでこれは全部見て……。ただしあれですからね、私が好きだからっていい作品とは限らないんですからね!
ガンダム AGE は3世代にわたってストーリーが繰り広げられると前もって告知されていました。これはお偉いさんからメイン脚本の日野さん(レベルファイブ社長)に与えられた枷、というか安全装置のようなものだと私は勝手に思っています。
というのも、ガンダム SEED Destiny においては脚本の人が前作の主人公キラとアスランを気に入るあまり露骨なひいきを始め、本来の主人公シン・アスカをいい加減に扱うようになり、誰が主人公なのかわからないフラフラした展開になってしまったという問題がありました。
今回メインで脚本を務める日野さんはレベルファイブの社長で、イナズマイレブンダンボール戦機などゲームのシナリオを書いてヒットさせた実績はありますがアニメの脚本としては経験はなく、またゲームの方でも白騎士物語とかギャラクシーなんとかとかまあそういうアレがあるので、全部そのまま任せるのには不安があったのではないでしょうか。
3世代にわたるストーリーということになると、一人スーパーマンを作ってずっとその人にかかりっきりにはできないので……という。あくまでも、私の推測です。だって、何か理由がないとこんな面倒くさいことはしません。それぞれの世代で、それなりの落ちを付けないといけないですし、登場人物も個別にそれなりに立てていないといけない。日野さんが自分から言い出したのなら「大した自信ですね」って話ですし……。でも偉い人が何も考えないでこの枠を押し付けた可能性はあるか。でもやっぱり偉い人には偉い人なりの思惑があると思うからなあ。

今のところ、この3世代交代劇というのはきちんと活かせていないと思うのですが、でもガンダム AGE におけるもっとも大きな収穫もここから生まれそうな気がしていて、なかなか難しいところです。

3世代交代劇ということは、よほどひねくれていない限り父−子−孫という形で主人公が移り変わって行くと思われますが、父にも子にも妻候補と思われるキャラクターが2人いたのに、各世代の主人公のビジュアルが公開されていることでどちらが主人公の妻になるのか丸分かりという状態になっています。子供の髪の色がヒロイン候補の片方と同じ色で、主人公と違う色というね。「どっちとくっつくんだ!」みたいなのがまったくない。うん、まあそういうのは、実際に描きたいことからすれば、ささいだ。ただ、こういう手際の悪さみたいなのは本編や周辺に満遍なく撒き散らされていて閉口することはします。

AGE の第1世代、いわゆるフリット編は実にひどいものでした。なんか、モビルスーツはキビキビ動かず「これは SFC 時代のスーパーロボット大戦か?!」という感じでしたし、キャラの話すことは支離滅裂だし、どうでもいいことに尺を割いたかと思ったら重要そうな話は本編でせずなんか重大な設定が外伝の漫画で明かされたりみたいなことが繰り返されなんとなくガンダムの最終回っぽいサブタイトルが付いた第1世代最終回は有耶無耶の内に終了し主人公はフリットからアセムにバトンタッチとなりました。

第2世代、アセム編になって「フリット編とは何だったのか」とか言われたように、随分 AGE の問題点は改善されたように思います。MS はキビキビ動いてそれなりにかっこいい戦闘をするようになったりしています。ですけど相変わらず日野さんが脚本を務めた回では各キャラクターの行動が支離滅裂だったり、未見の敵軍の新兵器に対応する装備をなぜか用意していたにもかかわらずその新兵器が使われると予想していなかったり、アセム編も半分を過ぎたのにネームドキャラ8人も新しく出したりとおかしなことは起きています。

ですけど、まったく何をしたかったのかわからなかった AGE に、ようやくテーマらしきものが見えてきました。

子がどう父を乗り越えていくのか、というテーマです。

フリット編のフリットは挫折しながらもスーパーマンでした。X ラウンダー能力というまあ言わばニュータイプ能力を身に着け、スーパーロボットガンダムを操って敵をバタバタとなぎ倒していく。みんながそのフリットを褒める。見てる私たちは「何これ……」とか言ってる。そんな感じでした。

そのフリットがアセムという子を持ち父親となります。フリットは軍の上層部に在籍し、輝かしい功績を持ち、アセムからはあこがれの存在に見えます。でもフリットには子供の頃まともな「父親」がいませんでした。肉親を見てもバルガスとかいうなんかドワーフみたいなのがいるだけだし、艦長のグルーデックは「俺は復讐の鬼だ!」とか言って子供の前で親を殺し「お前は俺だ復讐に囚われて生きろ!」とか言う人だったし、ウルフさんは父親を振舞うにはいささか若すぎました。

そういうわけで、フリットは父親をする上で参考にする人物を得ることはできませんでした。そのため、フリットはアセムに対して上官のような態度で接したり、息子が X ラウンダー能力を発言できなくて悩んでるのに「お前は俺の子だからその内 X ラウンダーになれるよ」みたいな返事しかできなかったりします。

「何で親父は街中の施設に攻撃仕掛けるんだよ市民に被害が出るだろ!」とアセムが言うのに対し、一応市街地に被害が出にくいようにアゼルをタイタス装備(近接戦重視)で出撃させているのにそれについては黙っているとか……*1

そもそもフリットは復讐の鬼状態になっていて敵を倒すためには時々変な判断をしますし指揮官自ら飛び出して交戦したりするのでなんかもうダメ親父なのです。

そんなダメ父に対して、アセムをなにくれと気にかけてくれていたのがフリット編の頃から登場していたエースパイロットのウルフさんです。彼は父親のようになりたいあまり X ラウンダーになりたいあまり強化人間もどきになろうとすらしたアセム*2に対して別にお前は父親のコピーになろうとしないでもいいじゃんとメッセージを出し続けていました。そして前々回には X ラウンダーでなくても経験と勘で活躍できている俺のようなスーパーパイロットになれ、と。
それでまあ、お察しの通りこれは猛烈な死亡フラグですので、前回ウルフさんは戦死し、アセムの中で永遠にすごい大人になったわけです。この猛烈な後押しでアセムフリットを克服できるのか? こういう親子の取り扱いをするのはガンダムでは初のように思います。ガンダムにダメな親父はたくさんいましたけど、乗り越えるとかそういう感じではなかった。テム・レイは「気の毒に……」って感じでしたし、フランクリン・ビダンは単にダメな人でしたし、ハンゲルグ・エヴィンに至ってはネグレクト野郎かこいつ! という感じだったりして。

セムフリットを乗り越えられるのか! これからの AGE に期待ですね。

とか何とか言ったんですけどやっぱり AGE は怖いもの見たさで見るアニメだと思います(わらい

だって上でグダグダ書いたウルフさんをきっかけにアセムフリットを乗り越えられるのか! の件にしたってウルフさんが死んだら急にアセム強くなるんですもの。それって X ラウンダー能力に目覚めた! みたいな話じゃないですか。そんな突然目覚めるような怪しげな能力がなくったってすごいパイロットになれるんだぜってウルフさん言ってるのに急に超常的な能力を手に入れてどうする。それは X ラウンダーじゃないかも知れないけどおかしな能力には違いないじゃないですか。それがないから悩んでたのにさあ。
どうしてこんな間抜けな話になるのかっていったらウルフさんが言ってたスーパーパイロットに関してメイン脚本の日野さんと作画監督の人が「放送後に」「Twitterで」「こういうものじゃないんですかね?」とか言ってる有様でこのシーンがどうしてあったのかみたいな意図が共有されてないどころかメイン脚本の日野社長の中ですらバシッと決まってないという惨状でしてそりゃまあこうもなりますわ。

あと日野社長のシナリオがゲームゲームしててアニメとしては唐突なんですよね。
フリット編で悪名高いコロニー編、コロニー内部で2勢力が抗争してる所に巻き込まれに行く話の1話目がほんとひどかったんです。こんな感じ。

  1. 敵が何の説明もなくどこからともなく襲撃してくる
  2. 次の瞬間街中に防御壁が展開されるんですがその瞬間街中からあんなにたくさんいた人がもういない
  3. 先週まで唯一敵に有効だったドッズライフルがまったく効かない

でもこれってゲーム、特にレベルファイブが得意とする RPG に置き換えるとしっくり来るんです。
1.はそんなのゲームでは普通にあります。スパロボの増援とかね! どこにいたの! 気付けないわけないでしょ!
2.は戦闘のシーンになったら画面切り替わるから通行人とか目に入らなくなって当然。
3.これはもう新しい街に来たんですからそりゃ新しい武器に買い換えないと通用しないですわ
というわけで RPG では普通にある、受け入れられる表現なんですよ。それをアニメでやると唐突になっちゃうんで日野社長のゲームシナリオをアニメ脚本に置き換える人が本当は必要なんですけどね。

まあこんなフォローしましたけど、でもゲームだろうがなんだろうが確実に頭おかしいでしょこいつみたいな言動する人がたくさんいるのでフォローしきれないんですけどね。

最近のトレンドはエンディングで表示される名前を見る前に脚本が日野社長かそうじゃないかを当てることです。AGE は普段からおかしなことが多いんですが、日野社長脚本だとなにかしら大変おかしなことになるのでわりとわかります。おすすめ。

*1:セムにだけでなく全員に黙ってるせいで視聴者にもその辺の意図がまったく伝わってない気がしますが!

*2:強化人間に肯定的な主人公もガンダムとしては初めてな気も!