レジェンドカード

「早く園田光慶三国志陸遜をレジェンドカードとして出すんだ!」
Kがそう主張するようになってもう何ヶ月になるでしょうか。
Kの全神経は園田陸遜のレジェンドカードへと向けられてしまっていて、まっとうな人間が行う活動という活動は、全て彼の頭から消え失せてしまっているようでした。彼が園田陸遜と叫ぶたび、痩せた喉に目立つようになったのどぼとけの動きがはっきり見えるのが、何とも痛々しく感じられました。
Kがなぜこうなってしまったかということは私には見当が付きます。コーエーの三国無双が悪いのです。コーエーの三国無双において陸遜はまさに紅顔の美少年という姿を持っていました。その陸遜の容姿に惚れ込む方も当然出てまいります。そこでそういった方が、こう言ったのです。
夷陵の戦いの頃陸遜はいくつくらいだったのかしら?」
Kは正史三国志に精通しておりましたし、また生来正直なたちでありましたから、勿論史書に正確に答えたのです。
陸遜は西暦183年の生まれて、夷陵の戦いは222年ですから、39歳となりましょう」
しかし、その場でKに求められていたのは正直さでもなければ、歴史への誠実さでもありませんでした。
「そんな嘘をついて嫌がらせをするのは良くないと思います!」
「どうしてそんないい加減なことを言うのですか!」
彼は石もて追われました。
彼は正しくものを知っており、おのれの知識に従って正直に物を言ったところ、迫害されたのです。彼は馬鹿が付くほど真面目なものですから、おのれの正義を疑いに疑いし……落魄して、今はこの有様です。
しかし自分の夢は自分の夢として持っていたい人を責めて何になりましょう。彼女らに園田光慶三国志陸遜をレジェンドカードとして目の前に突きつけて何になりましょう。それこそ、嫌がらせに他なりません。ただ、ただ私は少年ではないはずの陸遜を少年と扱ったコーエーに割り切れないものを感じながら、Kの寝台脇の花を新しいものと交換することしかできない自分を呪うのでした。
参考:園田陸遜