時をかける少女を語る会
先日時をかける少女を見たと報告しましたが、実は前半は「悪くはないが別段褒めそやすほどのレベルにはないなあ」などと思いながら見ていたのですが、
以降ネタバレを含むので続きを読む記法で。
タイムリープの残り回数が判明したあたりから急にストーリーが急展開し濃密になって、一気に引き込まれました。いやーこれはいいものだと思いましてプログラムを買い、あと歌に非常に魅せられたのでその場で CD を購入しました。CD の衝動買いなんて初めてだ。
やっぱりアレですね。一旦油断させておいて、最後のタイムリープを使ってしまった次の瞬間に功介が横を自転車で通り過ぎるあの瞬間。その後真琴が必死で追い駆けるけど間に合わない! というところよりもあの瞬間。猛烈な訴求力がありましたね。
というわけで非常なインパクトを受けたので id:kanose さん主催の時をかける少女を語る会(id:kanose:20060826:tokikake)に聴講生として*1参加してきました。
いやまあ、本当に口を挟むべきところがなかったもので。以下、記憶に残っていたことを箇条書き風に。 でも長いので覚悟してください。
真琴について
- 真琴はバカぶりは細田監督の理想の女性像であり、原作主人公の芳山和子は筒井康隆の理想の女性像なのではないか?細田監督は以前「自分はバカな女が好きだ!」と言っていたとかいないとか。
- 真琴が後先考えないで動いてしまうバカというか、元気系なのは、今の女性から見たらそうでないと感情移入しにくい、と女性視点からの発言
これは、まあそういう系の女性からしたらそうなんでしょうけど、そうでない女性からはどうなんでしょうかね。
- 真琴が後先考えないで動いてしまうバカというか、元気系なのは、ストーリーを回すため。真琴が動き回って、映画がアップテンポで進む。
- 真琴はスポーツができるけど、それなら普通部活に入っていないか? これは文系オタが想像する都合のいい元気少女なのでは?
- 関連して。クラスの中心(私はこの言葉変に便利すぎて使いたくないのですが、いわゆるスクールカーストの上位)から外れた人物ならこれはありうる。というか功介、千昭も中心から外れている組(千昭が失踪した時のひどい言われようから判る)。
- この映画を見ている層もやはり中心ではなかった層なのでは?
- とすると、出てくるのが「俺にはこんな青春はなかった」という絶望感
- とは言え「耳をすませば」に比べると多分にファンタジー(SFと言うべきか? わらい)なので絶望感を覚える人は少数にとどまる
私は男子校出身なので「こんな青春はなかった!」とは思うかも知れませんが、「うまくすればこんな青春があったのかも知れないのに!」とは思わないので絶望はしません。ありえたものがなかった時に人は絶望するのでしょう。
- 関連して、真琴・千昭・功介の関係はやっぱりファンタジー。現実では無理かな。
功介について
- いい人過ぎてリアルさを感じない
- いや、現実にこういう人は居る!
私は後者に賛成。ほんとなぜかこういう人は居るんですよ。ロクデナシ救済者とでも言うべき人が。
千昭について
- 「未来で待ってる」発言は、テキトーにしたのでは?
- 千昭が真琴を待つことが出来るレベルの未来から来たとは思えない
- いや、テキトーな発言ではなく、これは象徴的な意味合いで、真琴が絵を残す行動を取れば、絵が未来へ伝わる
これは私は最後の意見に賛成で、「未来で(お前が残してくれる絵を)待ってる」だと解釈していました。
魔女おばさんこと芳山和子について
- 原作と別人。
- 言を左右して真琴を翻弄する本当に「魔女っぽい」キャラ。あるいはガイナックスっぽいキャラ。
- この名前、写真、ラベンダーなどは原作ファンへのサービス。あるいは原作と繋がってるんですよと示すためだけのオブジェクトであり、あってもなくても可
この件については原作を読んでない私からは何とも。ああ、原作は今日注文しました。
高瀬について
- とにかく扱いがひど過ぎる
- あんなに酷い目にあったんだから実は救いがあってむしろあの後真琴と結ばれて報われるんだよ! なんだってー!
時かけは実にゲーム的な作品なのだよ
- 横移動=横スクロールばかりで、手前奥の移動が少ない(ただし、これはスクリーンが横長なのでその影響かも)
- タイムリープがゲームのセーブ・ロードに酷似
- しかもそれに限りがある
エネミーゼロだ! と思いました。
- 場面間の移動描写がなくすぐに目的地に着く
ロマサガの移動画面を思い浮かべていただければ。ただしこの件についてはそんな移動場面なんか描いても面白くないだけだから、という意見あり。ごもっとも。
細田監督の技法について
- 繰り返し大好き
カラオケのシーン等々。あと功介に後輩が告白するのを真琴がサポートするシーン。細田作品では他にも繰り返しが多用されている。
- で、そのシーンの BGM「ゴールドベルク変奏曲」は、最初に主題が提示され、それが変調して何度も繰り返される曲。実は告白が繰り返されるタイミングと曲の繰り返しが同調している。
- 影がない
細田監督の手による ONE PIECE の映画に影がないことを突っ込んで嘲笑の的となった人が居るそうな。
個人的にはVガンダムを見ておけば影なんか飾りだとわかります。偉い人にはそれがわからんのですが。
- 対して、背景は凄い。背景には影がある。
- それらは別に不調和ではなく、別に問題はないが、最初の異次元への旅はさすがにキャラとCGにギャップがあった。
- 背景に拘ってはいるが場所の整合性がとれていない。中野から渋谷へワープしたりする。
- そんなことを気にするのは都民だけ
- 功介、千昭は正しいフォームでボールを投げていたのに対し、真琴は変なサイドスローと、描き分けられている。
- それもそのはずで、細田監督は事前に女性とキャッチボールをしてフォームを確認したらしい。
これは、劇場で「おっ?!」と思ったんですよね。
その他 周辺事情など
- 杉浦由美子氏が功介と千昭でやおいみたいなコメントをしていたが、これはそんな作品ではなく、腐女子からしてもいかがなものかと思われる。
- ツガノガク版コミックは完全に原作準拠でありサプライズが全くないため微妙
- 時をかける少女 NOTEBOOK が現在品薄。重版未定で入手困難な状況にあり。
- DVD 化も未定だが、これは発売予定を発表することにより劇場へ足を運ばずに DVD 待ちになる人に劇場まで来てもらうための戦略であろうから、心配するに当たらないだろう。
- 2006年の夏は、ジブリになりたい GONZO の『ブレイブ・ストーリー』と、ジブリ息子の『ゲド戦記』と、ジブリと決裂した細田守の『時をかける少女』がの三つ巴だったんだよ!
- →宮崎駿と細田守が決裂に至ったのは、どちらもロリコンなので、双方の少女観の対立が原因なんじゃねえの? 「お前のロリキャラはなってねええええええええええええええええええええええええええんだよぉぉぉぉ!」
- →それって「ペド戦記」だね。
吹いた。何というコンボ。私も以前何気なくペド戦記とか書いてますがなるほどこういうことだったのか。
- 「シナリオ 時をかける少女」の存在について
- フィルムが14本しかない。フィルムを作るにはお金がかかるので上映館を増やせない。
だいたい話題はこんなところですかね。私は原作を読んでおらず、また私にとっての SF は「すこしふしぎ」であって、Science Flavor、科学風味、そう、ドクターペッパーみたいな味の、もとい、Science Fiction ではないので、この会に参加するのには素養的に大いに問題ありなのかなと思ったのですが、加野瀬さんがディープ過ぎる話になりそうになるとうまく話題をコントロールしてくださっていたので疎外感等々は感じませんでした。名司会だと思います。大感謝。
色々な話が聞けて興味深かったです。有意義な時間を過ごせました。最近はオタとしての情報収集が甘くなっていたからまた勉強しようかななんて気にもなりました。ここ数年は日本神話・民俗学系にフォーカスし過ぎだったんですよね。
しかしこれだけ話を聞くと見たくなってきました。どうしよう。今週末にでも行ってくるかな。
*1:なんて他力本願な!