転地人

義に拠って立ってたのに狸に転封された上杉マジかわいそうだが大勝利! ってドラマだったんでこのタイトルの方が相応しいんじゃないですか。

いやー終わりましたね。ほんとひどかった。
本当にひどいものからは目が離せなくなってしまうたちなので*1、最後までチェックしてしまいました。
実は初回は見逃しています。こども店長パート。でも通して見た知り合いの中では
こども店長パートがあの大河ドラマのピークであった」
と仰る方が多く当方大敗北でございます。多分、私には義がないから敗北したんでしょうな。

や、序盤は普通に面白く見ていた頃もあったのです。
超絶無口の景勝さんをみんなで寄ってたかっていじってた頃とか。
ホームドラマパートはまあまず良し、これで戦争とかも普通に描いてくれれば、まあまあの出来になりそうかな、と思ってたらまずほとんど戦争パートがなく、上杉家にとっては重要な新発田の反乱とかこともなげにスキップされ、無駄に上杉とはほぼ関係ない信長パートが挿入されて、やっと出てきた貴重な戦争パートは兼続泣いてスットコドッコイな有様でニントモカントモニンニン。

大河ドラマ見ててひっでえなあと思ったのは「利家とまつ」が筆頭なのですが、何か共通点がありますね。
利家とまつ:困ったら「まつにお任せくださりませ!」と言って味噌汁を作って持っていくと何か解決する
天地人:困ったら兼続が出て行って「愛!」「義!」とか言って泣くとあのBGMが掛かってなぜか解決する

利家とまつ」は場当たりで脚本書いてたんだか何だか知りませんが登場人物が先週と180度違う発言をするようなこともあり、話の筋みたいなものが存在しませんでしたので、年末の総集編が総集しようにもできず意味不明動画になっていたのが印象深かったです。

ほんとねえ、前田慶次とか最上義光とか出すべき人を出さずノブとか出してたのほんとわけわかりませんでしたよこの大河。
話が史実からそれるのは別に構わんのです。私が大好きな風林火山とか、一番面白かったのは勘助の就職活動パートでありあんなの全部作り話ですからね。

ただ今言ったように捏造とか創作ってのはそれをもってドラマが面白くなったり、わかりやすくなったりしないとダメなわけで天地人の場合捏造してどうなったかって言うと、都合よくキャラをいじくったりできましたーってだけで別に面白くもなってないし、わかりやすさに関してはかえって「え???」って感じでどうにもいけませんでした。

めちゃくちゃやるなら「遠山、後の天海僧正である」とかそこまでやんなきゃ。何なのあれ。
役者の方の顔力だけでしょうが!

それと、敵役の事情をさっぱり描かなかったのがてんでダメですね。最上義光なんて、影も出なかった。風林火山は、その辺しっかり出来ていたから面白かったと思うんですけどね。何で家康はあんな陰険な態度を取らなくてはいけなかったのか、それを描けていれば、随分マシだったと思うのですが……。

他、disに関して言いたいことは私より数十段上手にこちらの方が仰ってくださっておりますので。

http://b.hatena.ne.jp/entry/mousoutaiga.blog35.fc2.com/blog-entry-239.html

ですが、天地人も決して dis 要素だけではないので、褒めるべきところは褒めたいと思います。

キャストおよび、役者の方の演技は見事でした。これは、特筆すべきレベルであると思います。
パパイヤ甘粕とかは何か出オチになってしまっていたので何だかなというのと、松方弘樹松方弘樹という役しか出来んのだな*2というのはありましたが、総じてこのあたりは良かったと思います。
特に景勝の北村一輝、秀吉の「」は大変良かったのではないでしょうか。
景勝は無口の気難しいキャラで大変演じるのが難しかったのではないかと思いますが、同じ無口ながらもキョドり気味だった若い頃から段々肝が据わってくるあたりを見事に演じきったと思います。
秀吉の方はもうどっからどう見ても秀吉という感じでしたね。
他にも、気持ちがいいほどわかりやすい馬鹿だった小早川秀秋*3は良いアクセントになってくれましたし、大谷吉継島左近、ともに良くわかんないけどなぜか出番が極端に少なかったのに大変印象に残る演技でした。みんなのアイドル市松こと福島正則。彼は女性に投げられてドリフばりにぶっ飛ぶとか「……どうなのそれ」という猛烈にひどい扱われ方でしたが、そんな脚本の中でも猪突猛進の福島正則らしさは出ていましたし、それどころか脚本に合わせて福島正則の悲哀(なんかギャグっぽかったですけど!)も良く出せていたと思います。石原良純の評価、私の中でうなぎのぼりなんですけど。

……ですが。
無理なんです。脚本が狂っていたら名演連発でも部分部分が素晴らしくなるだけで、全体としてはスットコドッコイなままなのです。戦略の負けを戦術の勝ちでひっくり返すことは出来ないのです。
まあ、この大河に関しては原作からして曰く付きでしたし。

私としては、大変残念な大河でした。毎週笑って見ていましたけど、あの大河が笑わせていたのではなくあの大河は笑われていたのです。

このスットコドッコイ大河でも、次回以降への肥やしになればと思うのですけど、どうもそうはならなさそうなので重ねて残念です。NHK にこの大河を反面教師と見てくださる方がいらっしゃることを切に望むばかりです。

*1:例:鋼鉄三国志ただしノベル除く

*2:演技がタコという意味ではないです

*3:小早川秀秋本人が馬鹿だったといいたいわけではありません