雪の峠・剣の舞
- 作者: 岩明均
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/10/08
- メディア: 文庫
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雪の峠
戦いのことしか判らない、関ヶ原で戦わずして負けたと無念がる古参家臣団は軍事を重視した築城を献策しますが、義宣と若手家臣団はこれ以上の戦乱はないと見て交易を重視した地への築城を提案します。
しかし若手家臣団は戦いの駆け引きを知らず、説明にとどまったのに対し古参家臣団は評議の場でも戦いの駆け引きを用い結局義宣に自分達の案を飲ませてしまいます。
理解のある家老からそのことを指摘された内膳は、評議では古参家臣団の案が通ったものの、実際の建築の前には徳川に許可を得なければいけないことを考えて一計を案じ……というあらすじ。
まず佐竹を題材にするところが珍しく、岩明さんらしいと思いますね。実は私も佐竹については全然知らないに近かったです。
こういった駆け引きは面白いですね。負けたと見せかけて勝つ、素晴らしい。一見非常に地味な話ですが楽しめました。平時でも平時の戦があるわけですね。しかし平時に平時であることを理解できなかった、戦のことしかわからない人間は平時に居場所はなかったというわけですか。
あとは最後の演出がいいですね。この争いを経て出来上がった久保田の城下町は発展を続け港町と一体となり、現在の秋田市となった、とあるんですが、歴史の時代と現代のつながりを感じさせます。こういう作品に触れると歴史面白いなあってなるんですよね。歴史嫌いではなく、むしろ好きな方でしたが中学生の頃にこれ読みたかったなあ。というか私はカタカナの名前を記憶できないのに世界史を選択しておりマジ無謀。中国史の部分だけ高得点を記録しあとは低空飛行でした。
剣の舞
ハルナが、疋田に撓*1で「その構えは悪し」「悪し」と簡単にあしらわれているところのやり取りが微笑ましく良かったです。
この撓を使うことでケガをさせないように、と意識することなく稽古を付けることができた*2ので、ハルナはあっという間に上達し、戦場に出ます。
幸運にも仇に出会い倒す直前まで行くのですが、相手の奸計に掛かり結局は相討ちとなってしまいます。この負けた原因が何ともでして、まあ実に岩明作品らしくはあるのですが……。
ところで上泉伊勢守信綱出陣のシーンでは大身の十字槍を扱っているのですが、もう敵兵がこれでもかと切断されていて、『ヘウレーカ』での秘密兵器や『寄生獣』でのパラサイトの攻撃方法を考えると岩明さんは鋭利な刃物でズンバラリって表現が好きなのかなと思わされるのですが、どうなんでしょう。
両作品とも短編ながらしっかりと故事をベースにしており、現代との繋がりを感じさせて興味深いものがありました。上泉信綱の、剣術をスポーツとする考え、撓の発想がなければ現代剣道は存在し得なかったかも知れませんし*3。こういうのは大好きです。是非もっとやって欲しいところ。