シン・シティ

元々はアメコミなのだそうですが、ロドリゲス監督が惚れ込んで「いやもう漫画の世界絶対再現しますから! 後悔なんかさせません誓って!」と原作者を説得して晴れて映画化が決定したものなのだそうです。私は原作は未読です。
シン・シティのシンとは罪という意味です。罪の街。本当の名前はベイシン・シティという暴力と嘘がまかり通る街を舞台にした3つの話のオムニバスという形がとられています。
すぐに血を見る、不正は権力で押し隠され正義の通らない街ですが、それぞれの話の主人公は己が信じた女性のために大きな力と対峙するのでした。こういう話ですと結構そういう女性が本当は敵方で後ろから撃たれたりなんかするものですが、そういうことはありませんでした。
コミックを完全に再現するためなのか、色々特殊な手法がとられていました。例えば、背景が妙にくっきりしている、距離に関係なく全てがはっきりしていてピンボケが一切ない、というのがあります。調べたところ背景は一部を除いてほとんどがCGによるものなのだそうで、そのためはっきりしているだけかな、と思ったのですが、登場人物まで奥から手前までいやにはっきりしているので、これはコミックだから距離によるピンボケも何もねえよ! ということなのでしょう。
他にも上映時間のほとんどがモノクロ、というのがありました。稀に血の赤とかが加わるのですが、これは連載中時折二色刷りの回があったのを再現しているのかな、などと思いました。普段モノクロなので赤が目に入るととても鮮烈に映ります。
基本的に人体バラバラとかはわりとダメなので、色々複雑な気持ちで見ていたのですが、ひとつだけはっきりと気に入ったと言えるのは2話目に登場した「人間兵器ミホ」です。
人間兵器ミホは娼婦が自治権を得た地区の用心棒で、和服もどきを着、左右に一刀ずつ、合計二刀を差し、卍形の手裏剣を投げたりする人です。この人だけ滅茶苦茶タランティーノ。どこに協力したか分かりやす過ぎ。
3階建てくらいのビルの屋上から目標の乗る自動車の屋根に飛び乗り着地した瞬間に後部座席の二人は刀に刺されて死亡、運転席から銃を突きつけていた男の手首を卍の形の手裏剣で切断、手榴弾で吹き飛ばされて死んだかもと思わせておいて気が付けば投げた人間の背後に位置していてズンバラリ、と。素晴らしい。ゴーゴー夕張に似た良さがあります。タランティーノはこういうのが好き過ぎるな。私も好きですが。
というわけで、キル・ビル好きな人は人間兵器ミホを見るためだけに見ても良いかも。誘拐された女の子を救うために心臓病も省みず一人で戦うブルース・ウイリス、人を殺して喰う役のイライジャ・ウッドの不気味過ぎる目も見ものですよ。怖すぎ。