真田丸最終話 「偃武」

真田丸最終回のサブタイトルは敢えて付けないので、視聴者が付けてくれというお話だったので、私は偃武と置きます。偃武*1とは武(器)を偃(ふ・伏)せて片付けるという意味。武力で解決する時代は終わり、武器と武士が不要になった、という意味です。大坂の陣終了後に徳川幕府元号を元和と変え、軍事衝突が終わったことを示しました。これを元和偃武と言います。
戦国の勇ましさ、華々しさ、ままならなさ、辛さ、悲惨さ、体面を重視する矜持、人を騙す狡猾さ、その狡猾さを人に求める世情、人を平気で踏みつぶす強者、その強者への恨み……戦国の何もかもを信繁は引き受けて、幸村として死んでいきました。戦国の怨念と羨望の憑代となった幸村が死に、諸共黄泉へ旅立ったことでようやく天下は太平となった。幸村は天下のための人柱であった。
幸村は戦国の遺志の器であった。
後を継ぐことが決まっている嫡男とは違い、確固たる生きる目的を持たず、人質で故郷より余所にいる時間の方が長かった、根っこを持たない次男坊だからこそ人柱に、器になりえた。
そういう話だと、私は思いました。
なんだか、トミノアニメみたいです。そう考えると、幸村は「死人に引っ張られる」というやつです。

真田信繁が歴史の表舞台に立ったのは大坂冬の陣から夏の陣までの約8ヶ月間。当然、残った記録からはどういう人なのか良くわからないのですが、その良くわからないを強い個性を持たないと読み替え、だからこそ人の想いを受け入れていくことができる人と解釈したのはうまいなあと。
戦国時代の「器」なのです。幸村は。

*1:漢籍からの言葉。『書経』周書・武成篇に「王来自商、至于豊。乃偃武修文」とある。

続きを読む