真田丸37話「信之」(9月18日放送分)

のぶゆきってこのPCで打つと当然信幸って変換されるようになってるんですよ。そういう積み重ねがダラダラドラマ見てるだけの私にすらあるわけで、では改名する本人からしたらどれだけの積み重ねを捨てろって言われたってことなのか、という話ですよね。要らんところでヘイトを買う秀吉を渋い顔で見てきた家康なのに。

  • 状況に関われないフラストレーション

「俺は勝ったんだ!」「なのに負けたとか言われても納得いかねえ!」「俺はまだ戦う!」
気持ちはすごくよくわかる。パパ上の凄い顔。獣の顔ですよ、あれは。散々無茶苦茶をしてきたパパ上ですけど毎回目的があったわけで、無目的に暴れるようなことはしてこなかった人なので、どんだけ今回腹落ちしなかったのかというのがわかりますね。床ドンドン叩いちゃってね。
記録でも関ヶ原で西軍が敗戦したのを知ってなお東軍方を攻撃したそうで、家康の心証は最悪だったと思われます。

  • 信幸お兄ちゃんの命乞い

さっきまで「えー真田? 他で忙しいの! 真田はあとあと」とか言ってた家康。真田への恨み骨髄とかそんなことはないですよね。それが急にこのこだわりぶり。平伏しまくってるお兄ちゃんを見て絶対権力者の昏い愉しみに目覚めてしまったのか。
「死んでもらう」
(幸の文字を)「捨てよ」
これは嗜虐ですよ。
お兄ちゃんは頑張った。あんまり打算とかないだろうけど、真摯に命乞いすれば忠勝は味方に付いてくれるって多分お兄ちゃんはわかってたよね。まあでも忠勝が「命乞いを聞いてくれなかったらお兄ちゃんと城に籠って徳川と一戦する!」とかまでは思ってなかったというかやり過ぎでまた寿命が縮まったでしょうけど!
そのあと忠勝が「初めて殿に逆らっちゃった……」ってホロホロ涙流すの、ほんとなんというか愛おしいというか。忠勝怖いのに愛おしいとかすごいなあ。
信幸の表情も良かったですね。「命までは取らん」って言われて明らかにほっとした後に「捨てよ」での悲痛な顔と言ったら。

  • 「この役立たず!」

そりゃああんまりだよパパ。と思ったけど、ここで昌幸が「なんだー蟄居かー、殺されなくて良かったー」みたいな反応だと「あれっ甘かったかな?」という家康の反応を招いてひどいことになるので、「蟄居つらいつらい」ってことにして家康に「これでよし」と思わせるためにわざと信幸を怒鳴った……という説をとりたい。

  • 生き地獄を味わえ

世の中を平和にするには結局昌幸みたいな人を放置しておくわけにはいけないんです。信濃の爆弾男です。なのでー、当然の処置であるー、蟄居を「生き地獄」扱いにしたのが脚本の妙味と。真田丸の家康は戦大嫌いだしね。
でも秀吉に無理やり遺言書かせたときにハラハラしてた家康や秀吉が死んだ時に合掌していた家康とは何かが違う。見下ろす家康を下から撮ってるのとかはそういうのを表しているのではないかと。
「賢い次男坊はどうじゃ」と言ってる家康、こっそり信繁を相当買ってますよね。秀忠とチェンジしたいのかも。秀忠と言えば「上田城きちんと戦えば勝てたのに!」って本多佐渡が窘めようとしてるのに言い張ったの、家康は「わけわかんない息子だと思ったけど骨があるようになってきた?」ぐらいに思ってるかも知れないですね。あれはあれで成長している。負け扱いになった悔しさが成長を促したか。昌幸に「初陣で負けると一生戦下手だぜ」って言われてましたけどもう秀忠は戦下手でも構わないし、こうやって成長したし、なかなか昌幸の思惑通りにはならんでしたな。
あと家康が「戦に勝ったのになんでこうなるのーって思ってるだろうけどー」って言ってましたけど、だからこそ徳川は真田を屈服させたという形を作らないといけなくなってるんですよねー。なので罰が大きくなると。たまんねえなあ。
「生き地獄を味わえ」の時の信繁の顔が直江のようでしたね。すんごい顔。あんな信繁の顔初めて見たぜ。大坂の陣まで消えない火があの時信繁にかすかに灯ったよね。

  • 「あの人は豊臣家のことしか考えていませんでした!」

なるほど治部忠臣。というのとああーやっぱり奥方のこと考えてなかったんだな三成ィという気もしました。そんなんだから壊れちゃったんだぜ奥方。「お前には情ってもんがねえのかよ!」って清正に言われても仕方ないのだぜ。三成の処刑を見ておけって命じるの、そうでもしないと奥方が後追いするからみたいな考えもあったんでしょうけどスパルタすぎるよ……。

  • 「楽しかったぞ石田治部」

実際楽しかったんでしょう大谷刑部。でも春ちゃん……。男どもは好きに意地を通して達成感を得て死んで行って幸せかもしれないけど(三成もかすかに笑ってたし)、残された人はどうなるのよ?! ってところで信繁は「義父上を尊敬する梵天丸もかくありたい」って言っちゃうのね。うたさんと春ちゃんの悲しみは完全には受け止められてない。まあそうでなければ大坂の陣には参戦しないのだから、当然なんですが。

これまで三成とか秀吉とか家康とか、斬新な像を見せ続けてきた真田丸でしたが小早川秀秋だけはこれまでそこそこ丁寧に伏線を張ってきたのによく見る小早川秀秋で終わって残念でした。
小早川秀秋を妄想の中襲うメンバーが宇喜多秀家一行で全員生者なの、大坂の陣への顔見せもあると思いますが幽霊より生者の方が怖いって秀秋が思ってるのかなー、と思いましたが、秀秋が裏切って悪かったって思ってるのは宇喜多さんだけなのかなということも考えました。宇喜多さんは能の師匠でもあるし、身内だし。なんか半分馬鹿にした感じで巻き込んできた石田治部は裏切っても何の痛痒もないぜってことだったのかも知れない。

  • 「信之」

「読みは同じ。儂の意地じゃ」お兄ちゃんかっけえ。信之と書いた紙は正面向いてるけどお兄ちゃんは斜めなの、やっぱり納得いかないぜって感じが出ていて良いですね。