真田丸35話「犬伏」(9月4日放送分)

真田なにがし個人の話ではなく、真田「家」の話となればハイライトは関ヶ原の前の「犬伏の別れ」。講談などで有名なエピソードです。関が原どちらの陣営が勝つかわからない。付いた方が負けてしまえば真田家は一巻の終わり。ならば二手に別れ、どちらかが死んでも勝った方は生き残るから真田家は残る、という悲壮な別れの物語です。あるいは昌幸が乱世ジャンキー過ぎて信幸が離脱するというパターンもあります。いずれにしろ悲しい話なのですが、どうなりますか。

  • 石田治部の思いがこもった桃の木

最終回に燃えるのかな……。

  • 寧様「きりちゃんは気立てのええ娘」

「帰ったら二人で顔を出しなさい」
それってきりちゃん娶れって言ってるんだぞ信繁。わかってないな……。まあなあ。

  • すでに腰が砕けかけてる景勝

兼続「敵軍10万を越えました!」
景勝「逃げたい人は逃がしてあげてね……」
いまさら何言ってるのって顔をしたけどうなずく兼続……。

  • 家康「秀忠お前には数万の兵に匹敵する知恵袋本多佐渡を付けるよ」

秀忠「お目付け役とかやる気になってたけどやる気がなくなったよ!」
ちらっと江を見て
秀忠「まあ多少だけど」
江「できるできるできる絶対できるよ!」
もうこれだけで江がどんな人かわかるという。
しかし本多佐渡を付けてもらってラッキーだったんだぜ秀忠?

  • 三成「性懲りもなく勧誘に来たよ」

大谷刑部「泊まっていきな」
ここで大谷刑部が即決しないところにごり押ししないだけで三成成長したよねって思います。
大谷刑部「勝てるかどうかわかんねーじゃねえんだよ! 巻き添えで死にたくねえんだよ! やるからには勝つんだよ! 策もある! 俺がお前を勝たす!」
かっこいい。ところで大谷刑部が喋ってる策的なもの三成は考えてなかったんですか?

  • 真田の皆さん

まだパン武田運動(武田旧領回復運動)に熱心なパパ上。信玄に囚われている……。
作兵衛とかは以前「戦いは好きじゃないけど村を守るために仕方ないね」って言ってたのに今度はほんとに嫌そう。秀吉の天下統一で一旦平和になったから今更嫌だよねえ。そういう流れに反しているパパ上。

  • 三成「速過ぎる!」

大谷刑部「味方を増やすためにメール攻勢するんだよ! 口述筆記しろほらはやく!」
三成「ちょちょちょっと待って!」
日本語というのは書き言葉と話し言葉が一致しないのが元々で、明治時代に言文一致運動を経て今は書き言葉と話し言葉が一致しているのですが日本語の歴史全体を見れば一致している方がイレギュラー。なので三成は大谷刑部の発言を書き言葉に変換して、ひょっとしたら漢文に変換して書いているからかなり頭を回転させる作業をしていて悲鳴を上げてるんですね。

  • 昌幸「早過ぎる!」

何のことかパッと理解する戦術の人信繁。パパ上も戦術の人。パッと理解できない戦略の人信幸。ここでパッと理解できないけど、信幸だけがわかる状況もある。
しかし味方同士連携が取れていない。齟齬が決定的な悲劇を生む今川泰宏アニメかいって思いますがうっかり連携を取った先に情報を漏らされては困るので言えないのは当然ですよね……。

  • 昌幸「大戦だから10年は掛かるよ」

彼らが見ていた大戦は小田原、朝鮮出兵でめっちゃ長期化したわけでこう見るのも仕方ない。伊達も毛利も黒田官兵衛も上杉もそう見てた。

  • 信繁「パン武田運動とか言ってる場合じゃない、中立とかありえないぜ夢物語は終わりにしようぜ!」

信繁にはこう叱られ信幸からはくじ引きとかもうやめようと叱られたパパ上、ちょっとしょんぼりしているのが悲しい。後ろ向いてゴソゴソ何やってるのかなと思ったらくじ作ってたんですねパパ上。
くじの後「私は決めた!」って信幸が3回言ってるの2話でくじ引きの後パパ上が「わしゃ決めたぞ!」って3回言ったののリフレインですね。

  • 信幸「お前らは豊臣につけ、私は徳川に残る」

戦略の人信幸ならではの視点なのです。ここまでの経験が信幸の人間力を上げこの結論に達したのです!
勝った方が負けた方を何としても助けろ! 全員で生き残るぞ! という策なのです。ここではもう3人とも大義とかどちらが正しいとかぶっ飛んでて真田がどうするという話しかないのがいいですね。
この策、出すなら信幸しかないんですよねえ。信幸以外がこの策を出すと信幸を仲間はずれにする感じになってしまいますし。
この後信繁と信幸が話し合ってる裏でパパ上が寂しげに、でも満足げに笑って酒を飲んでましたね。息子兄弟が自分を超えたと思ったのでしょう。それは寂しいけどうれしいことであったに違いないのです。

  • 信幸「いずれまた、三人で飲める日が来ることを祈ろう」

なおこの回が草刈、大泉、堺がそろっての撮影の最後になった模様。

信幸は関心を知っていてパパ上と信繁が知らないのは信幸だけが戦術の勉強をしていたからでしょう。自分の戦術の才がないと知っているから必死に勉強したんでしょうね。パパ上と信繁には必要ない。

  • 後ろ向きな悲劇を前向きな話にした真田丸

よくある大谷刑部「どうせ死ぬんだし、成算がなくても三成に賭けよう」
真田丸の大谷刑部「勝てるかどうかわかんねーとか言ってるんじゃねえ三成! 勝つんだよ! 俺がお前を勝たす!」
良くある犬伏の別れ「関が原どちらが勝つかわからん。二手に別れて真田を遺そう。負けた方は死ぬだろうけど……」
真田丸犬伏の別れ「ここでは別れるけど勝った方が負けた方を生かすんだよ! 全員で生き残るぞ!」
後ろ向きだからこそ一流の悲劇である講談を前向きに解釈し直した真田丸お見事でした。もちろん悲劇あってこそのこの解釈し直しではあるんですが、そう来るとは思いませんでした。良かったです。
これまで何回かプレ犬伏の別れと書いたように信繁と信幸の間に何回か相克が生まれそうになったんですがそのたびに絆は修復されどのように犬伏の別れとなるのだろうと思ったんですがこう来るとは。別れに相克は必須ではないですしね。しみじみと良いシーンながらニコニコ飲んでいる裏に悲しみが貼り付いていて、ほんと良かったです。