【ネタバレあり】真田丸20話「前兆」

戦国推理ドラマとか言ってて今週は古畑源次郎ですか、室賀殿を呼べ! と思ったのですが別に全然いつものでしたし怖すぎ。これからしばらくは毎週こういうホラードラマやるんです?
今回は落書事件というわりとどうでもいいっぽい事件を扱いながら豊臣政権の危うさとか豊臣政権の政策なんかを解説するという実は重要でよくできた回でしたね。

  • おこうさんの離縁と稲姫の輿入れ

おこうさん「またみんなで一緒に暮らせるのですね」
暮らせない……。
おこうさん「あなたさまが頭を下げるなんて、離縁だとしても」
信幸「!……」
おこうさん「えっその離縁なの……かしこまりました」
かしこまっちゃった!
おこうさん「何がいけなかったんでしょうか……」
おこうさん何も悪くないし。
ばばさま「これはひどい
ばばさま「真田のために」とか言っててもこれは許せないんだ。おこうさんはばばさまから見ても孫だしねえ。真田は外には表裏比興だけど家族の絆はすごく強いよ!
昌幸パパ「わしも断るつもりだったんだけど源三郎がどうしても受けるって言うんでな」
信幸「真田のために……」
あの場にいる人誰一人パパの言うこと信じてないよね……誰も信幸を咎めないし、久しぶりに見た佐助まで信じてないよあれは。いつもならすぐに動くのに「弁えよ!」って言われるまで不動だったじゃない。
昌幸パパ「やっぱやめるか?」
もうパパは口閉じろよ!
まあ敢えて言うなら信幸に決意表明させるために嘘を吐いた可能性はありますが……。

  • 輿入れについてきた1号

曲が輿入れと思えない曲……このカップルこればっかりか!
稲姫の輿を運んできた人足の中に後姿でも様子が変な忠勝めいた人がいるなあと思ったらやっぱり忠勝でした。そっとしておいてあげる昌幸パパ珍しく有情。武士の情けよ……。しかしこんなの他のおつきの人たちめっちゃ困るだろ。扱いに困り過ぎる! 家康が面倒臭くなって「あーあーもう行かせてやれ!」とか言ってたであろうことが目に見えます。

  • 寒い

静岡に比べたらそりゃ長野は寒い。しかし初夜に「ほんとに言っていいのか?」から「寒い」って言われたのに*1抱きしめてやらずに羽織るものを持って来いとは……。そして持って来いと言った先が元妻というね……。おこうさんの笑顔がまた。

  • 風呂にひゃあるがよろしいかと

ちょっとジョークを言ったら予想外に受けてしまったので恥ずかしくなってすぐ下がっていく三成可愛すぎるでしょう。

寧、茶々、阿茶局それぞれが敵なのですね。和やかに菓子食ってると見せかけて……
阿茶局「下賤の出なのに大変でしたね」
茶々「マジで」
寧「うちは亭主が出世し過ぎて大変!」
茶々「次に帝が来る時はちゃんとするから。あれっ寧様知らないの?」
これは嫌味じゃなくてマジで気まずくなったから逃げたんだろうなあ。
阿茶局「お茶々は妊娠してるんじゃないの? 子供産んだことあるからわかる。そっちはわかんないだろうけど」
火花飛び散りまくりですよなんなのこれ。

  • 古畑源次郎

ノリノリで捜査に乗り出す信繁。室賀さんを助手として冥土から呼んで来い。高木小山田が出ていたら古畑ではなくてコナンになるところだった。才をひけらかして調査の結果何が起こりうるのか考えてない感じが若さを醸し出していていいですね。落書きの意味がよくわからない平野は、やっぱり信繁はきちんと教育を受けている方なのだということをわからせてくれますね。しかし本当に平野は下世話な感じだなあ。余計なことした片桐さんが胃に穴を開けてるのをニヤニヤしながら見てたよ。ていうか片桐さんこの調子で大坂の陣まで生きられるんですか。

  • 駆け込み寺

日本の寺だけではなく他の国でも宗教施設が為政者から人をかくまう機能を持っていたのはよくある話ですね。

  • 刀狩と尾藤道休

刀狩と喧嘩禁止(惣無事令につながるものがある)が人を追い込んだ面があるというお話。色々な新しい政策に、光と影が。

  • 秀吉「門番十七人すべて磔にするよ」

三成「うぐぐぐ」
この時掛かっていた「秀吉がすごいことをするときに流れている曲(フル)」ですが、いつもの曲調から恐ろし気な曲に転調したの熱かったですね。
タクティクスオウガでオルゴールの曲が怖い曲に変わったのを思い出しました。これ→http://www.nicovideo.jp/watch/sm8005181

  • 秀次

いい人なんだけどなあ。いい人過ぎるなあ。あと信繁ときりが秀次の殺生関白ポイント溜めさせてませんか?

  • 寧「殿下は元々怖い人でしたよ」

「わしはなんと言われてもいいが、息子を貶められるのは許せない」って秀吉言ってましたけど、こういう風に言われたのを明るく笑い飛ばしいてたのではなくて腹の底にずっと溜めてたんですな秀吉は。怖すぎる。自分は散々言われててムカついて息子にはサルとかハゲネズミとか絶対言わせねえって、そういう意気込み。

  • 三成と大谷刑部

信繁「生きていても役に立たない男、死んで役に立ってもらいましょう。露見しなければよいことですぞー!」
大谷刑部はこれに「ナイスアイデア!」と反応しましたが三成は躊躇しました。大谷刑部、単なる気配り名人ではない。尾藤道休の首を斬る時に信繁が躊躇したら買って出ましたしね。そして三成のやや融通利かない感じ。

  • 寧がさっさと出てくれば門番十七人は死なずに済んだのでは?

そうは言ってもこの騒動、茶々の子の話ですからね。茶々が側室になるって聞いてあんな顔してた寧様がどうして自分がわざわざこの件の仲裁せにゃならんの? と思うのも仕方ないというか。あと寧が出てきて収まった風に見えましたけど秀吉は尾藤道休の親戚縁者を皆殺しにして村焼く件の撤回してないんですよね。だから寧が出てきたけど尾藤道休の親戚縁者は皆殺しにされて村は焼かれているかもしれない。寧が先に出てきても門番十七人は殺されたかもしれない。門番十七人の処刑と尾藤道休の親戚縁者を皆殺しにして村を焼いたのは記録に残っています……。

  • 三成ハイパーかっこいいやばい

こんなかっこいい石田三成初めて見たよ……。
大谷刑部「ちょっと今回は殿下ひどいよ、落書きで人殺すなよ」
三成「それサバン、殿下の前で同じこと言える?」
大谷刑部「もちろん言える。言ってくる」
三成(アカン)「いや言うべき時には自分が言うから」
大谷刑部は九州征伐の際に何かしらの諫言を秀吉にして博多付近で謹慎を命じられていることもあり、これ以上やったら死ぬぞってことですか。
気配り名人の大谷刑部でも正論を言えば秀吉に通ると思っているのですか。秀吉に関しては普段は気配らない三成の方が上ということなんでしょうか。
ここで大谷刑部を止めたのもちょっと株上がりなんですが、本当にかっこよかったのは秀吉に諫言しているシーンですね。信繁が横から口を出した時に「口を出すな! お前は退がってろ!」
勘気を蒙るのは自分だけで良いということですよね。信繁を巻き込みたくない。すごく思いやりがある男じゃないですか。かっこよすぎるわ。三成が「佐吉」は正気だって言ってるのに秀吉は「石田治部少輔」って呼ぶんですよね……。
一人で酒を飲んでも全く酔えないっていうのもよかったですよね。あの時三成の前にあった大一大万大吉の文字が悲しい。信繁が尾藤道休を下手人にしようと言った時にも映ってましたね大一大万大吉大一大万大吉は一人はみんなのために、みんなは一人のために。そうすると世の中は大吉になる! ぐらいの意味なんですよね。

暴君秀吉はどのようにして生まれたのか 私の意見といただいた意見を総合して

戦国時代、下剋上! とか言っても国衆ですらない人たちが大名になったぜレベルの話ですらあんまりないのはやっぱりそれが難しいから。
なぜ難しいのか? 信長の野望とか光栄三国志を遊んでいる時は忘れがちなのですが、軍を動かすのも統治を行うのも個人でやるのではなくて組織でやるものなのです。なので
1.個人の能力+2.スタッフの能力+3.組織に蓄積されたノウハウ=実行力
なのです。ぽっと出の人には1しかないのです。
2とか3は代々大名やってる人とか一応家臣団を持ってる国衆とかにはあるのです。この差が大きい。
たとえば中央の混乱に乗じて政権を乗っ取った三国志董卓なんかは2や3がないのはよく理解していて著名な儒学者を(脅迫して)招いたりなんかして、袁氏(本流の。袁紹はあんまり本流ではなかった*2)などと組んで政権運営しようとしたのですけどスタッフが代々の信頼できる人たちではなかったので自分に不利な政策を混ぜて提言されたり暗殺を計画されたりでとうとう董卓はキれてスタッフの言うことを聞かなくなり暴走して滅亡しました。
秀吉も2や3を持たない人です。2や3が多少でもある人物って大坂城メンバーの中では三成、だいぶ下がって片桐且元、ひょっとしたら大谷吉継、おしまいって感じ。
秀吉は2がなかったので親類縁者をガンガン引っ張って2を作ろうとしました。羽柴秀次福島正則加藤清正小早川秀秋。あとは自分が取り立てた家臣で、賤ヶ岳七本槍、羽柴四天王とか*3。でもこの人たちを起用しても3がないのです。
3はもう仕方ないので自分の成功体験から自分で作るしかないのが秀吉だったんじゃないかなと。徹底的な現場主義! 現場で俺はこうしてこう成功してきた何でお前はそれができないんだ! 戦国WATAMIの誕生ですよこれは。
自分の成功体験以外からだとあとはもう漢籍しかない。中国の書物*4。代々の日本の為政者は漢籍を読んでその上で「んーでもこれをそのまま日本でやるとうまくいかないよな、アレンジして使おうぜ」として組織に蓄積するんだけど秀吉はそんなの知らないし。そもそも漢籍オリジナルの方が高級だとしてありがたがられるのが学問だし。そして秦の始皇帝だか項羽だか後期の劉邦だかなんだか知りませんけど、そういう人たちの事績を学んで、ああ民に舐められたら死ぬのだなと、そういう学習をしてしまう。そして自分は成功者で成功体験を元に動いているのだから正しいし諫言してくる方が間違ってるし、と思ったら日本の暴君テンプレから大幅に飛び出して大陸の暴君みたいな振る舞いをする恐ろしい秀吉が生まれてしまうと。
実際民に舐められて死ぬパターンもあるから難しいところなのですが……。

*1:これ家康か本多(正)の入れ知恵かもなあ

*2:本流が董卓に殺されたのでその後めでたく袁紹は本流扱いとなりました。かたき討ちという目標もできたし袁紹はウハウハだぜ

*3:この辺ろくなのいないね

*4:統治(に限らないけど)に役立つ日本の本とか聞いたことないですし