平清盛 第28話「友の子、友の妻」(7/15放送回)

なんだこのエロい感じのタイトルは……と思ったら本当にエロでびっくりした! 常盤ってそういう風になるんでしたっけ? すっかり忘れてたな……。
義朝退場回です。義朝は為義パパが情けないから自分は強くなるぜ! と意気込んでそうなろうとした! でもやってみたけど結局は為義パパの子供だったよ……別に為義がヘタレなだけもなかったけど! という感じでほんとよかったです。「平清盛」の登場人物の中では一番気に入ってるかなあ。悪左府を押しのけるとかとんでもないで。玉木宏、もうその名前は忘れないと思う。

義朝

義朝回です。今回。
落ち延びていく義朝。あの後何をどうやったのか義平、朝長、頼朝と合流しています。頼朝が髭切がないことに気づき「落としたのではないか!」と心配して探し、一行からはぐれてしまいます。これ何気ないですけど意味深長な感じがありますね。
髭切は源氏重代の太刀って言ってるわけじゃないですか。それを回収しなかった義朝はもう源氏の棟梁たる資格を手放してしまっている。そして髭切が気になった頼朝にもうその資格は移っている。頼朝は由良姫の教育をきちんと受けてそういうことが身に付いている、だけどそれで一行からはぐれてしまった。でもだからこそ生き延びることになるという……。うーむ。

その後次男朝長に乞われて義朝はとどめを刺すことになります。朝長とか平治の乱になってようやく登場してあくびして義朝に叱られてってシーンしかなかったわけじゃないですか。でもこのとどめのシーンはね。まごうことなき「泣かずともよい」と諭した為義の子ですからね、義朝は。表面上はどうあれめちゃくちゃつらい思いしてるだろうと。

そして長田忠致の屋敷ですよ。長田忠致保元の乱の初登場の時「義朝様は父親に逆らってでもの英断すごい!」と言って出てきたわけじゃないですか。でも今度は義理の息子鎌田正清とその主君を討とうとしている。初登場と対応するシーンです。
よく言われる義朝の最期は入浴中で武器がないところ、押し包まれて斬られたというもの。しかしこの義朝は忠致の異心を見抜いていました。正清に木登りの話をします。東国行った直後のエピソードですね。正しく手順を踏めばきちんと木登りできる。以前、正清そうはアドバイスしました。義朝はもう木登りは終わりだと言います。どこかで道を間違えたのだと。
風呂の用意ができたと忠致が伝えます。しかしもうこの義朝はこりゃどうもと風呂に入るはずもありません*1。正清と同時に身を翻して庭へ躍り出ます。「すわ、斬り死にか!」と思われましたが、正清と刺し違えて自害。正清とは何も示し合わせていないのに阿吽の呼吸で。まったく美しいったらない。義朝、見事!

織田信孝「昔より 主をうつみの 野間なれば 報いを待てや……ってあれっ!?」

信頼

全然見事じゃないのがこっち。成親と一緒に仁和寺まで逃げてくると、そこにいる後白河上皇に助けを求めます。
後白河「大変だったね……疲れただろ? 食事の用意がしてあるから、存分に飲み食いするといいよ」
信頼「上皇様……お礼の言葉もないっす……」
こいつがそういうタマなわけないじゃん。側近のくせに知らないのかよ。
そしてはじまります後白河リサイタル。
信頼「新曲ですねー」
後白河「そうだよ新曲だよこの歌のタイトルはな……長恨歌だよ!!!!」
ここで来ますか長恨歌! 長恨歌絵巻をスタイリッシュに投げ飛ばす上皇! 
後白河「寵愛した家臣に、国を滅ぼされる、皇帝の物語である。朕は、そうなりとうない!」
後白河上皇、ちょっと信西の諫言を容れるのが遅かった……。でも信西に悪かったって思いはきちんとあるんですかね。台詞こそなかったですが、信西の奥さんが実はこのシーンに立ち会っていました。
信頼と成親は捕えられ、勝者清盛の裁きを受けることになります。上級貴族が前回は武士に脅されて、今回は武士の沙汰を待つ身になるわけですが、この数年前にはとても考えられないことだったんだと思います。武士の世は確実に近付いている。
清盛「成親殿はわしの姻戚だからセーフ! だが次回はない! 覚えとけよ!」
これ伏線。
信頼「わたくしもお助けくださいませ!」
清盛「お前は死ね!」
信頼「面白うないのう……」
清盛「まともな志を持たないやつの人生が面白いわけないだろ! 早く死ね!」
信頼の「面白いのう」を一度聞いてみたいと思っていたんで、クーデター成功後に言うかなあと思ってたんですが言わないので不審に思っていたのですがなるほどこういうことだったんですね。納得。
こいつは志がなかったですが志がある人にこの大河はやさしい。道を踏み外しても、愚かであっても、道半ばにして倒れたとしても。義朝、悪左府信西

頼朝・池禅尼・清盛・宗盛

頼朝の毅然とした態度。由良の教えがまっとうであったとわかります。
それに引き替え宗盛……。いや時子を dis りたいわけではないですけどね……。
宗盛「あの時情けない感じだったのは初陣だったから仕方ないの!!」
頼朝「あっ私も初陣だったんですけど……」
宗盛「くぁwせdrftgyふじこl」
池禅尼「みっともねーだろうが! 宗盛!」
頼朝も宗盛もともに三男で、正室の子で、兄二人とも死んで、武家の棟梁となる同い年。方やどん底から頂点に立ち、方や頂点から地へ転げ落ちた。こんなに対照的な二人もないです。
池禅尼はけなげに卒塔婆を作る頼朝の姿に感じ入ったようで、ハンストしてでも助命したいようです。でも池禅尼として本当に何が何でもなのかどうか。逸話通りなら池禅尼の強い意志が通って助命となります。だから、私は清盛は家盛の件もあって池禅尼に負い目がある。だから池禅尼の言うことを聞くのだろう……そういう展開になると思っていました。でもハンスト宣言した池禅尼は家貞が持ってきたお茶を飲んじゃうんです。そこまで深刻じゃない。それじゃ何で? 清盛が頼朝を助命したいと感付いているから。でもその話をする時に折角差し伸べてもらった手なのに清盛は「(家盛とは)似ても似付きません!」と跳ね除けてしまうし、みんなの前で怒ってみたり笑い話にしてしまったりしますし、池禅尼池禅尼で「家盛の命が二度奪われるようで」とか言っちゃう。「家盛の命を奪ったのお前だろ」と受け取れる言葉を言っちゃう。まさに愛憎。
でも殺すかどうかはワンサイドゲームじゃない。藤原師光改め西光が現れて「信西殺した義朝の子だからきっと殺して必ず殺して死刑にしてね死刑しかありえない」とか言うわけです。あっこれ今後の伏線か。

それでまあ、結局清盛は頼朝を殺さない。
「どうして清盛は頼朝を殺さなかったのか? のちの平家滅亡につながった、清盛の大失策である」
よく言われる話です。
「どうしてそんなミスをしたのか?」
栄華を極めた平家を作りあげた本人ですから馬鹿なはずはない。なんでそんなミスを?
それは……
ミスじゃなかったから! 清盛がそうしたかったんだよ!
としたのが、このドラマですね。

清盛はわざわざ髭切を丁寧に持ってきて一騎打ちの顛末を語る。
頼朝はきちんと教育されていて誇り高いからそんなの聞きたくない。「真の武士が、まやかしの武士に負けた。左様な世の行く末を、私は見とうござりませぬ。早う斬ってくださりませ!」とか抜かす。
頼朝は清盛をまやかしの武士と罵った。でもナレーションの頼朝は清盛のことを「武士の中の武士」とか言うわけじゃないですか。何で?
清盛は頼朝に義朝の幻を見て散々言いたいことを言って、髭切をその脇に突き立てた!
「まことの武士がいかなるものか見せてやる。指をくわえて見ておれ!」
口から出た台詞はこうです。でもこれってどこかで見た。これの本当の意味はこうですよ。
「死にたくなければ、強くなれ!」
忠盛が清盛に宋剣を突き立てて言い放ったこの言葉。これ。これで、清盛は頼朝にとって父のような存在になった。
そして頼朝は父の言葉に従い死にたくないから強くなって……。孝行息子だ。これ。

「なぜ清盛は頼朝を伊豆なんぞに流した? もっと遠くに流せば、巻き返しもなかっただろうに」(崇徳上皇だって讃岐だろ?)
そう言われることもありますけど、このドラマなら理屈が通りますね。
「まことの武士がいかなるものか見せてや」りたいからですよ。平家の様子が流れ伝わってくるようなところへわざわざ流した。

きちんと筋が通ってて腑に落ちる。これですよ。ドキュメンタリーや検証番組じゃないから一から十まで本当である必要はない。ただきちんと筋が通っていて面白ければ良いんです。

弁慶・常盤・牛若・清盛

なぜかちょいちょい出てきていた鬼若(弁慶)は常盤を匿っていて、清盛の所へ出頭する常盤を止めたりしています。あれか、頼朝は義朝を見ていた。義経は見ていない。義経に義朝の話を伝えるのは弁慶。そういう筋書きなんですかね。
常盤が「清盛の慈悲にすがろう」とか言い出すのは、まあやっぱり三人での出会いのことがあるんでしょうね。三人で仲良かったしね。
で、出頭した。平氏一門の男どもは「まー敗軍の将の妻でしょ? であんな美人だ。当然側女にするよなー出頭したんだから本人の OK もらったようなもんだしー?」とか言ってる。でも清盛は親友の奥さんだしなあ、と思うとそんなことできない。時子にもそう言った。
で、頼朝を殺さないで戻ってきちゃった。じゃあバランスしようとすると傍流でもっと若い牛若とかもじゃあ殺さないでおく? ってなる。でもタダで許したら理が通らない。えこひいきになる。公平でない処断を下せば秩序が乱れる。じゃあ何を代価に取ると言ったら、そりゃもう常盤本人しかない。でも清盛はさっきから気が進まない。
で、会って話してみたら常盤が「自分は死んでもいいから」とか言うじゃないですか。権力者の前で、幼い子を抱えた母が、子のために死ぬとか言う。
そんなの清盛は嫌じゃないですか。だって。白河上皇の前で自分のために母親が死んでる。「死ぬことなんて許すか、母親なら生きて子を守れ!」そう言うしかない。これで清盛の中で母親と常盤が重なっちゃった。常盤が死なないならもう差し出す代価は決まった。常盤も「もとよりその覚悟でございます。私は義朝の妻ですから」とか言っちゃう。いい度胸だみたいな感じで清盛は笑う。
「ダチの奥さんなんか抱けねーよ」が、ほんとにダチのこと愛してたんだな、ってわかっちゃって「ダチの奥さんだから抱ける!」に切り替わって、母親ともダブらせて。すごい危ういシーンだ、これ。押し倒されて髪がバーッて扇のように広がっててなんかめちゃくちゃ綺麗だった。
これまで清盛は時子とも明子ともベッドシーンなかったわけじゃないですか。ここへ来て常盤とっていう時点で「このシーンは意味深長なのよー!」って示してますよ。いや、本放送の時は清盛がパンチしたら頼朝が義朝になったところが衝撃的過ぎてそれがずっと頭に残ってからここのシーンの意味きちんと理解できてなかったんですけどね。このシーンそんなに長くないし。

最後に。
義朝ほんとによかった。頼朝がパンチされて義朝になるシーンはめちゃくちゃよかった。あのシーン義朝は幻だから一言もしゃべらないけど目がさ、目がほんとによかった、目の演技。ちょっと涙目で。清盛に自分の暴走の結果"置いてけぼり"にしたことを謝ってたし、そこまで自分のことを大事に思っていてくれたのかっていう驚きみたいなのも混じってた。ポーズもあいまって「何か受け受けしい……」と思っちゃったけどそういうの込みでよかった。あのシーンのせいでもう玉木義朝忘れられないよ。最近「ホモォ……」って茶化されるけどそういうのと紙一重なギリギリの友情ってほんといいと思うんですよ大好きなんですよ。というか私が百合とか好きなのもそれだ、っていうか別に同性同士に限らん。オカリンと助手の関係とかも大好きだし。愛情だけでなくて友情を通してイチャイチャ(物理的にそうする必要は必ずしもない)するの見てるのは私は大好きなんだ。
何か暴走しちゃいましたけど、ほんとこの大河ドラマいいですわ。私の中で風林火山越えもあり得ますわ。

*1:女性ファンには期待している向きもあったようですが