平清盛 第26話「平治の乱」(7/1放送回)

今回はまさに信西回でありました。
結局、この脚本では政治的に難しい話は省かれました。後白河院近臣(藤原信頼など)・二条天皇親政派(美福門院ナリコちゃんなど)・信西チームの三派が存在して、それぞれ対立はしていたのですが、院近臣と親政派は信西排除に関しては結託して発生したのが平治の乱です。
でもこれ非常にわかりづらい。たとえば史実にいては源頼政会長は実はこの頃はナリコちゃんの下にいたので信頼と一緒に信西ぶっ殺すチームですが、二条天皇が清盛の手に渡った後は信頼と一緒にいる意味はありませんから(天皇親政派ですし)袂を分かって清盛チームに所属して戦勝国側です。
他にもなぜ信頼は実は清盛と姻戚関係にあったりして*1まあ色々ごちゃごちゃしているんですね。
それを、番組序盤からずっと描いてきた清盛と信西の友情、清盛と義朝の友情でばさっと整理してしまいました。良いと思います。全部説明する尺はありませんし。その代わりこの友情をきちんとここまで描いてきた。積み重ねがありますから。

長恨歌絵巻

後白河院信西から貰った長恨歌の絵巻を女房たちに読んで聞かせているところに当の信頼が来て「謀反です!」と言ってるのを信じて幽閉されるとかスパイシー過ぎます。楊貴妃=信頼って時点で面白いのに絵巻を開いてる時にまさに絵巻の通りになるとか。

伝令忠清と重盛と家貞

熊野へ向かう清盛にクーデターを伝えたのは伊藤忠清(武力82知力18)。「伝令を務めるだけで今回の忠清の策略ポイントは消費され尽くしたな」とか友人は言っててほんとひどい。ここで、長男重盛がふるっています。
重盛「そう奇怪なことではないと存じます。源氏の棟梁は父を斬らされた上に、我ら平氏のように取り立てられることもなく、飼い殺しのような扱いを受けてございます。殺したいほどに信西入道を恨む気持ちが募るとも、おかしくはございませぬ」
ナイス分析力。できる男です。堅物なだけでなく、できる男。三部へのキャラクター付け、きちんとできていますね。クーデターやむなし状態であったならパパに進言してあげても良さそうな気もしますが、パパも織り込み済みと考えていた?
さてそのパパ清盛は武装してないのにいきなり取って返そうとします。
重盛「我らは武装しておりません!」
清盛「義朝に信西殿を殺させてはならん!」
まー清盛としてはそうなんでしょうけど、パパできねえなあ……と思っていたら家貞が一晩でやっていました。
家貞は「こんなこともあろうかと!」とばかりに武具を運ばせてきていたんですね。何で誰も気づかなかったんだ。ともあれ、これで清盛らは都に取って返します。

義朝と頼政

義朝は信西をぶっ殺したくてしかたなくて挙兵し、政庁を占拠した形ですが、まだ信西をぶっ殺せずにいました。なので「信西を探せーぃ!」と意気軒昂です。
そこへ姿を見せたのが源頼政会長です。保元の乱以来ですね。
「こたびの果敢なる行い、この頼政、感じ入りましてございます。されど、いささか浅慮とも思えます。なにゆえ今、かような形で兵をあげられたのでございますか」
果敢なる行い=後先考えてない
浅慮=無謀だろ
「このトンチキ!」とコメントしているわけです。前後の源氏武者の描写があまりにバーバリアン的なので頼政会長の分別が際立っていて、今後の頼政会長の立場を暗示していますね。
義朝これに答えて「世に示すためだ。武士の地位を高めるは、政などではない。力であることを」
力こそパワー! という返事です。頭はよくない感じですけど、これが前回義朝が取り戻した、義朝が目指していた姿なんですよね。

平安京エイリアン

信西一党は都から脱出して山の中にいました。信西は突然立ち止まると穴掘りを指令。
穴の中に隠れて源氏武者をやり過ごそうという作戦のようです。でもこんだけ立派な穴掘るでしょ、当然掘った土が出ますね、穴掘ったことわかりますよね……あと穴掘ってる時間あったら遠くへ逃げられるんじゃないの……とかは考えてはいけません。これは逸話なので。首を渡したくないので地中に埋まって自殺したとする話もあります。信西を掘って埋めてお前らは逃げろと言われた師光は散々泣いてますね。

朝廷もしくは蛮族パート

実権を握った信頼ら。信頼は除目(官職の任命)し放題状態です。自分はねんがんの近衛大将をてにいれたぞ! で、義朝には播磨守を与えます。播磨守は清盛のものなわけで、一足飛びに義朝は清盛に追いついたことになります。
でもこのやりたい放題がクーデターに無関係な貴族の面々に評判が悪いわけですね。当然ですが。ナリコちゃんや忠通がかなり不満げな顔です。それはクーデター参加者も人によっては感じていて、成親はなんか落ち着いてない様子。
そこへ登場したのが……
「父上! こたびはおめでとうござりまする! 父上のご英断、誇りに思いまするぞ!」鎌倉悪源太義平だーっ!
悪源太義平の悪は悪左府の悪と同じで「悪い奴」って意味じゃなくて「ハンパない」って意味なんですけど、でもこれこの顔明らかに暴走族。「悪い奴」でないとしたら「ガラの悪い奴」でしかない!
信頼「おう義平、なんぞ褒美はいらんか?」
義平「さような物よりも、軍勢をお与え下さりませ! 阿倍野にて、清盛一行を待ち伏せしとうござりまする!」
完全なバトルマニアでした。こりゃいかん。
そもそも初登場の、義朝の命で義朝の弟を殺して友切奪うシーンからなんかやばそうな雰囲気は台詞がなくともなんとなく伝わってきていたんですが、ここまでとは……。

六波羅平氏館)

平氏の屋敷では、居残り組がこの事態へどう対処するか? について話し合っていますが、参加メンバーは……
教盛(三盛)、経盛(四盛)、頼盛(五盛)、時忠(チンピラ)、基盛(小二盛)
とまあこんな感じ。前にもこういうのありましたね。これでは当然有用な感じの意見は出ないわけですが、その中でも頼盛は忠正おじさんの件があるので、明確に反信西を押し出しています。そこに反応したのは時子。
「静まれ! 殿は言うておられた。信西殿の国作りに賭けると。目指す世に信西殿は欠かせぬお方。見捨てようなどと、断じてお考えにならぬ!」
すると頼盛はパシッと黙りましたね。これは宗子には頭が上がらなかった忠正おじさんのようで面白い。
そこですかさず盛国が「きちんと備えて、殿を待ちましょ」と締めました。いやーできるな。

洛外

清盛らは京へ入れません。義平率いる関東鎌倉愚連隊が京の入り口で待ち伏せしているという情報が入ったからです。
伊藤忠清「義平がいるから京に入れないとか! 全員倒しちゃえばいいんでしょ!?」
ああ……やっぱり策略ポイント尽きてた。
重盛「多勢に無勢っすね。阿波に渡って兵を集めましょう?」
清盛としてはどっちも採用できない策。というか忠清のは策と呼ばない。阿波に渡っていては時間が掛かり信西が危ぶまれるので兵はここで集める、義平軍はどの程度なのか物見を出して兵力を確認しろとナイス指示ですね。

その信西

当然穴の中なのですが、逃げろと言われたはずの師光がまだ信西穴のそばにいます。だんだんと信西に心酔していくさまがこれまでも描かれてましたからねえ、この人。この人にとっては信西がまさに生身観音に見えていたのでしょう。信西のために髻も切ったりしていますし。その師光のために信西は西光という法号を与えました。もう髻切っちゃってるから当然この後は出家だよねー、ということなんでしょうか。
で、「師光もう仕方のない子、どうしてもそこに居たいならそこに居て OK だけど自分がどうなても声を出したり助けようとしたりするな、自分のやってきたことを見聞きしていたお前には生きていて欲しい」とコメントします。自分がここでたとえば死ぬとして、それでも自分がやってきたことをきちんと知っている人が残ってくれるのなら、せめてものなぐさめになるということですよね。
そう言うと、後は独り言なモードでした。「自分はどこかで道を誤ったのかなと」「何者になりたくてここまで登ってきたのかな」ここで迷っちゃいますか。

また洛外

忠清「ちょっとー物見まだなのー? バトルまーだー?!」
清盛はここでバトルはしたくないんですってば。
清盛「義朝よ、愚かなことをしてはならぬ、信西殿を殺してはならぬ」
これを聞いていた重盛。なんかおかしくね? とコメントします。
「すいませんけど信西を助けても平氏のためにはならんのでは? あの小賢しい奴は平氏も源治も好きにこき使ってあの地位にいるわけでしょ? つまりあいつがいる限り武家の世ってこないんじゃないすかね? ここは待ちで、信西が死んだら信頼ぶっ殺して、源氏も倒せば平氏の時代来るじゃないすか!」
的確なコメント過ぎる……。
ですけど清盛は信西名場面集を長々と回想しながら信西は助ける、信西は友だから、信西は俺が進む道を見失った時に現れてくれた。信西のために俺は何者かになれたんだ、と言います。
一方信西は今穴の中で自分を見失っているわけで、ここが対比になってるわけですね。しかしちょっとここの回想あの初登場シーンも含んだ長尺で、これはちょっと鼻白みました。いやーだって高階通憲信西)が落とし穴の中で初登場を果たした時から「あっ、そういうことね!」って身構えていたのでね。ここでテンポ犠牲にしてまで回想長々やらなくてもよかったんじゃないかなーって。
清盛「者ども続け! 平清盛は、断じて友を見捨てはせぬ!」
冒頭でも触れましたが平治の乱は政争や陰謀を横にやって人間関係でまとめちゃいました。ここでは重盛が言ってることの方が正しいし、「大河ドラマ!」としては盛り上がる感じもしますし、実際重盛が言う通りになります。ですけどここまで清盛と信西、清盛と義朝の友情を描いてきたわけです。それならあいつちょっとやり過ぎだと思っていても友達なら「まーあいつは死んでもしょうがないよね」とはならないですよね。お前忠正おじさん斬らされたの忘れたの? 清盛と信西、清盛と義朝の友情なんて作り話じゃん、と言ったら清盛の家と忠正おじさんが親しくしていたのも作り話ですし*2
つまりこれまでの話の組み立てからしたら重盛の助言は正しくないのです。史実ではそんな感じになっているとしても。

洛中

義平「パパなんで待ち伏せしちゃダメなん! 清盛をみすみす京に入れちゃうん?!」
これもこのドラマの友情ゆえ。義朝は以前のように清盛と直接対決したいんですよね。持てるパワーを全部ぶつけて。だから清盛圧倒的不利の場面では仕掛けない。「情けないモビルスーツを倒して何になる!」ってことですよ。
史実では信頼が清盛と姻戚関係なので、信頼は清盛が自分を支持すると見てここで攻撃しなかった、らしいです。

ディグダグ

一方その頃信西は穴の中にいた。
みなさん信西高階通憲)の初登場シーンは覚えてますよね。清盛が掘った落とし穴に落ちて。
「誰でもよいゆえ、助けてくれ!」
散々伏線を活かすドラマですから、当然憔悴しきった信西が助けを求める先は誰でもよい。
「誰でもよいゆえ、助けてくれ!」
当然、こう言うと思ってました。そしたら
「清盛殿、助けてくれ……!」
これですよ。不意を打たれてじんときた。卑怯ですよもうこんな手を使って感動させようとかさーもーまんまと引っかかった。信西にとっては清盛は確固とした味方で友で。もはや誰でもよくはない。清盛も自分が何者かわからぬ者ではもはやないわけですし。たまらん。清盛だって信西にひどい仕打ちを受けたわけですから義朝に同心してもおかしくないんですよ。そしてそういう仕打ちをしたことを意識していない信西ではない。でも「清盛殿、助けてくれ……!」。いや参った。
その信西に助けが来た! 清盛だ! と思ったら、それは憔悴しきった信西が見た幻。手を差し出したのは清盛ではなく、源氏武者でした。満面の笑みから絶望へ! そして哄笑! 「己が誰なのか見つけたり!我は信西入道ぞ!」 信西、自ら首を掻っ切って自害! 己は誰なのか、その答えを信西もまた見つけて死していった、という。
この清盛の幻のポーズがまた信西初登場シーンと同じなんですわ。にくいっすね。
覚悟を決めた顔で穴の中に入って行って、どんどん弱気になって笑顔になり、哄笑して自害。すごい熱演でした。実は、ツイッターで明かされていたのですがこの時の演技は、まず朝に途中まで収録して、昼からは出演中の舞台があるのでそこは動かせないのでそっちへ行って演技して、夕方もう一度 NHK に来て続きを撮ったそうです。毎回メイクに1時間くらいかけて。いやー……すごい。

洛中

義平警戒ラインが張られなかったので洛中に戻ってこれた清盛。そこで清盛が目にしたのは……
吊るされた信西の首! それを拝む民!
このシーンは「平治物語絵巻」にも描かれているそうです。
先週の施しシーンはこのためだったのね……。

清盛「信西殿……信西殿! なんということをしたのじゃ……義朝……なんということを……」
これで清盛の肚が決まりましたね。
義朝「来たか…! 怒っておろう清盛。だが怒りこそ力。力こそが武士のまことぞ。今こそ定めの時ぞ……。源氏と平氏、いずれが強いか……!」
悪落ちライバルかあんた。いやそうだった。その通り過ぎる。少年漫画大河だしこれ。
平氏は、源氏を滅ぼす!」
「源氏は、平氏を滅ぼす!」
待て次回!

*1:信頼の嫡男と清盛の娘が結婚している

*2:忠正は忠盛の家とは疎遠だったそうな