平清盛 第24話「清盛の大一番」(6/17放送回)

大河ドラマでは、きつい回の後はわりとゆるい回が来るんです。
たとえば私が大好きな『風林火山』では由布姫が死んだ次の回は勘助が高野山に行ったら長尾Gack虎がいて「「なんでお前がここにいんの!」」とかなったり。
次回予告を見る限り「今回はゆるそうな感じだな」という雰囲気を醸し出していました。「現役関取が出演するぜー」みたいな告知もありましたし。確かにまあ、ゆるい回ではありました。でもそれは前回とかに比較したらって話であって絶対評価ではゆるくない。今回も面白い回でした。

まず敗北者となった崇徳上皇は讃岐へ流されました。勝者代表信西はまず新しい政治の手始めとして内裏の修繕を行い、これを完成。褒める後白河ですが、信西は「平家のおかげなんだぜ」とコメントします。

清盛はこの功績で経盛(三盛)、教盛(四盛)、頼盛(五盛:おじさんに引け目がある)それぞれの官位が1レベルアップしたよーと告げます。「じゃあ兄上は?」「残念ながら三位にはならなかった」 三位になると上級貴族、政治にバリバリ口を出せるようになるのですが、そうはならなかったと。さらに重盛(清盛長男)は従五位上。その重盛は清盛に頭を下げるタイミングが遅れたりしていて、何か不満がありそうです。弟の基盛が聞いてみると、忠正おじさんを斬れと命じた信西の下で普通に仕事してる清盛が不審なようです。あれですね、子供のころの清盛と同じですね。ぶっかけフェスティバルされてるのに平伏していた忠盛パパを見ていた清盛の視点と同じ。

そんな重盛をよそに、清盛はまた信西に呼びつけられて仕事を命じられます。
信西「どんどん古式行事の復活もやっていきたいと思う。まずは相撲節会(すまいのせちえ)ね」 これは悪左府と同じ志向です。
信西「んで、予算は税金から、租税から用立てたいんだけど、これを見てよ」
藤原師光が持ってきたリストによると、鎮西(九州)からの納税額がいかにも少ない。
清盛「鎮西とかこの辺よりよっぽど豊かだろ? おかしいじゃん」
信西「そうだよおかしいんだよ。だからこれから九州出張して大宰大監大宰府*1暫定トップ)の原田種直からきちんと税金取り立ててきて」
清盛「それなら俺を大宰大弐大宰府長官)にすれば話早いじゃん」
信西「そんなのダメに決まってんだろ! お前をポンと大宰大弐になんかにしたら抵抗勢力がうるせえだろ! さっさと行けよ!」

新たな後白河帝の対戦相手、美福門院得子は「お前なんかワンポイントリリーフだろ!」としつこく譲位を迫っているようです。後白河帝は「マジうぜー」と不満顔。この対戦はうざいだけで楽しいわけではなさそう。

清盛は「折角鎮西行くんだし、鎮西手に入れてくるぜー」と出発。それを見送ってる成親。時子は「なんかうちのボス肝座ったんだよねー」とコメント。

源義朝は授けられた官職が左馬頭では低いと不満です。もっとレベルアップさせて! と信西に陳情に行きますが応対するのは師光。義朝が「恩賞を下さりませ」と頼んでも師光は相手にしません。意気消沈して引き換える義朝は廊下で公家から「親父殺したのに左馬頭止まりとか義朝マジ哀れ」とか陰口をたたかれています。戻ってきた信西に、師光がさすがに義朝は気の毒じゃないんすかねーと心配するのですが、信西は「平氏と源氏は武士の双璧。源氏をたたくほどに、平氏をとりたてることができるのだ」と答えるばかり。

ちなみに。記録によると義朝はまず恩賞で右馬権頭に昇進しています。で、「これじゃ不満だよ!」と義朝が言うのですぐさま左馬頭となりました。左馬頭は朝廷の軍馬をつかさどる左馬寮・右馬寮のうち片方のトップです。軍馬は当時重要な軍需物資だったので、それを統括する機関のトップが位が低いとかはありません。上級貴族の子弟が就く官職です。もちろん清盛よりは低い官職ですが、そもそも保元の乱開幕時点で清盛と義朝で6レベル差が付いているのですからこれは当然のことです。むしろ義朝は大いに評価されたと見て良いと思います。ま、そこはそれ、これはドラマなんでね。

大宰府に到着した清盛。原田種直を訪ねると屋敷は宋の調度品なんかで飾り立てられています。清盛はやっぱり珍しい感じの丸い卓の珍しい感じの椅子に座らされて、茶を注がれてずいぶん珍しげな様子でした。
このエキゾチックな感じはなんか龍馬伝が懐かしいですねえ。こんな円卓囲んで長崎の上級商人が麻雀してましたよね。茶はまだこの頃では珍しく、普及するのは鎌倉時代だったでしょうか。
さて、こんな様子の屋敷の主人の金回りが悪いはずがありません。どう考えても取り立てた租税を自分の懐にインしてます。現れた原田種直は「いやっはっはこの辺は荒くれ者が多くってさー、手なずけるために金をばらまかないといけないんすよ」と見え見えの嘘を言います。その場では清盛は「ふーん、そう」と引き下がりますが。
翌日清盛は屋敷に訪ねてくるというよりも押しかける感じで登場。「どうも〜☆」みたいな軽〜い感じで挨拶しますが兎丸とか荒丹波みたいな元海賊チームを連れてきました。
盛国「元は都へ運ぶ米を襲っていた海賊にござります。太宰大監様におかれましては、鎮西の暴れ者達に手を焼いておいでのご様子」
原田の家人はビビッて刀を抜きますがこれはもう清盛の思うツボ。兎丸の若い衆が「何で抜刀しとんじゃ!」と突っかかりますが、兎丸が自分の若い衆をパンチして、原田の家人の刀を勝手に納めて「ご無礼致しました」と。ビビッてる原田。ニコニコ見ている清盛。「海賊というのは存外、曲がった事が嫌いな者どもでござりましてな」
とか何とかいう盛国。荒くれの取り締まりはこいつらにさせれば OK! とか言いながら、てめー不正してるとこいつら海賊は不正嫌いだからぶっとばされるかもねー? 若い衆血気盛んですからねー。いやいや私には害意はないですけど! みたいな。5000%やくざの手口だこれ!
硬直している原田から茶を奪い取って飲んでしまう清盛。原田もついでに呑まれてます。「まことうまきものにござりまするな。器も見事にて。宋伝来の物にござりますか? かように珍しく、うまきものを貴殿らだけで独り占めするなど、もったいなき事じゃ。どうじゃ? 太宰大監殿。我ら平氏一門と手を組み、もっと鎮西の財を巧妙に動かして、共に、力をつけてゆかぬか?」
「播磨守如きに何ができると申す!」
「いろいろとうるさいやつじゃ。黙って俺に従え」
声を荒らげることもなくニコニコヤクザフェイスで見事に清盛は原田を屈服させました。
作戦成功、ということで異国情緒あふれるところで清盛率いる平組仲良く夕食です。兎丸はこのアガリをバッチリ着服するのか! とはしゃいでいますが清盛は「これは全部相撲節会用だよ。着服しないよ」と言います。兎丸がちょうつまんねーと文句を言うので、「これは朝廷と俺との相撲じゃ。俺がいかなる技をもって上つ方に手をつかせ奉るか、よう見ておるがよい」と清盛がコメント。ちょー意味わかんねという顔をする兎丸に、酒をすすめる盛国。兎丸と盛国って蛮族と貴族みたいな感じですけど随分仲いいですよね。

税金がバッチリ届いたので相撲節会できるぜーと大喜びの信西。そこで清盛が相撲節会の宴の膳は俺に任せてよと言うと、信西は嬉しげに任せますがこれって清盛の作戦なんですよね。

さて、成親が自分の妹経子と重盛の縁談を持ってきます。最近パパに色々納得行っていない重盛は渋い顔。それを見た清盛は「今が一門にとってどういう時かわかっておろうな。1つ過てばすべて水泡に帰す。我が父の忍耐も叔父上の死も、これも嫡男としての務めと心得よ」と。
お前が言うんですか! と思ったら家貞さんが言ってくれました。「一門にとってどういう時かわかっておろうな、あれは殿が先の北の方様を妻としたいと仰せになったとき、わしが申し上げた言葉じゃ。それでも殿はご自分の思いを貫き、先の殿もお認めになられた。その殿があのようなことを、他ならぬ重盛様に強いられるとは」
すかさず、盛国がフォロー。「あの頃より、はるかに重いということにございましょう。一門の背負うておる荷は」 清盛はいい家人を持っています。そのナイスフォローが気に入ったのか、家貞さんは「まことに立派になったなの、盛国。そなたがおって殿もさぞかしお心強かろう」とうれしそうに廊下を行きました。「もう盛国がいれば殿は大丈夫だな」ってところでしょうか。なんか死亡フラグくさいのでやめてください!


源頼朝は母親の由良のプッシュで、皇后宮の少将の職に就きました。後白河天皇の姉、統子内親王に仕えることになります。義朝と頼朝が挨拶していると、祝いの品を運んでいた由良が倒れてしまいます。統子内親王から心労だろう、由良につらい思いをさせるんじゃねーぞと義朝は責められてしまいます。
義朝はたまらず常盤御前を訪ねるのですが、もう完全に背中を丸めちゃってるし全然元気がありません。義朝はまた信西の元へ行って恩賞を求めますが、完全に無視されてしまいます。この義朝の憔悴ぶりったらない。あのイケイケだった義朝はどこへ行ったのでしょう。父為義を斬ってからというもの、昇進は果たせず、由良は倒れ、内親王には責められとまったくいいことがなく、なんだか情けないと見ていた父親にどんどん似てきているようです。

重盛と経子の婚礼の日は相撲節会の日と重なってしまいました。成親はそちらへ行ってしまうので来られません。気にする経子と気にするなと清盛。平氏一門が祝いの踊りをします。こういう時は頼盛も率先してやるんですね。でもあまり板の間で踊ってると天地人の「どじょっこほい!」を思い出してしまってちょっとな……。
みんなニコニコ笑顔の中ひとり難しい顔をしていた重盛は、急に経子の下座へ移動すると「申し訳ござりませぬ。此度のご縁、なかったことにして頂きとう存じます!」と平伏するのでした。
まあ奇行ですね。でも今の清盛はいきなり怒鳴ったりとかしない。忠盛パパを髣髴とさせるようになってきましたね。「重盛、いなかることじゃ」と清盛が聞くと、重盛は「経子様には何の不服もござりません。しかし私には嫡男としての覚悟がござりません。一門のためとはいえ、大叔父上を己が手で斬ることができる父上が、それを命じた信西入道と、平気で働ける父上の、後が継げるだけの腹が座りませぬ」と答えます。
すると清盛はニコニコしたまま「さようか、お前の考えはようわかった。ただお前のたわごとに付き合っている暇はない。つべこべ言わず、早う婚礼を済ませ、子でも儲けよ」と言うと重盛を掴んで庭へ投げ飛ばします。目を白黒させる重盛。清盛は戸惑っている経子の前に座り「ご無礼を仕りました。かような不束な倅にござりますが、末永くよろしくお願い申し上げます」と酌をします。池禅尼がふと微笑むと声を張り上げて家貞が歌いだし、一同も歌に加わりました。重盛を見る清盛も経子も笑顔でした。家貞のタイミングが絶妙で、清盛とのコンビで重盛の奇行は「なかったこと」にされたようです。

宮中では相撲節会が始まり、後白河帝や関白藤原忠通が見守る中、相撲の取り組みが行われています。「現役力士初の大河出演!」と触れ込まれていた豊真将もいました。しかしデブ専疑惑すらあるはず*2の後白河帝が相撲には全然興味を示していません。清盛が準備した宋の茶が気になって仕方ない様子。わざわざ宋の衣装も用意させてそれをまとった女たちが、膳を運んで茶を入れて、ってやってるんですね。茶を飲んだ後白河帝はニッコニコ。信頼がが「勝者に帝よりお言葉をたまわる」と言ってますがこれをスルー。どうでもいいですが後白河帝は「お言葉を」と言われたら全スルーしてますな。前回といい。
帝はもう相撲とかどうでもよくなっていて、「この膳は誰が支度した? この珍しき茶はなんぞ」と質問。そこでピンときた信西すかさず「播磨守清盛による支度にございます。宋国のものを宋国の作法にのっとり、入れたものに存じます。此度の相撲節会、播磨守自ら大宰府へ出向き、鎮西の財を滞りなく集めたゆえ、かないました。そこで見つけた面白きものを、相撲節会にて、披露したは播磨守の座興にございます」とコメント。帝は「決めたぞ。播磨守清盛を大宰大弐とする」と宣言。

館で剣を振る清盛に、信西は「まったくそなたの相撲にはあきれたわい。手も触れずに勝ちを得おったのじゃからの」と感心することしきりでした。

つまり。
信西が清盛を大宰大弐にポンと就けてしまうと家柄がーとか、信西のえこひいき人事がーとか、めんどくさいことになるんですね。だから信西は一旦断った。でも帝が宣言することには周囲も反対はできない。では帝に宣言させるには? 清盛が大宰大弐になればこんな面白いものが出てきますよーと示してやればよい、ということです。清盛の作戦を即座に見抜いて援護射撃した信西、さすができる男です。

後白河帝は譲位を決めました。美福門院得子とのバトルはもう飽きていて、清盛とじゃれていた方が面白いと思ったからなんでしょうね。

ラスト。廊下で清盛と義朝が顔を合わせます。
清盛「久方ぶりじゃな」
義朝「信西入道のもくろみがわからぬか? 源氏を叩き、平氏を取り立て、武士に絶大な力を持たせる気は毛頭ない。貴様も用が済めば捨てられる。我が父や貴様の叔父のように無残にな」
清盛「それでも今は他に道はない。信西殿と手を組むより他に」
義朝「その先にあるというのか、貴様の言う武士の世とやらが」
清盛「そうだ」

清盛は落ち着いている。義朝は焦燥して憔悴して、どうにもふがいない姿。以前の忠盛と為義を見ているよう。清盛の黒装束と義朝の緋の装束は官位によって定められた色のはずなのですが、二人の内面を表しているようで、非常に印象的でした。

今回のタイトルの「大一番」。相撲にひっかけていてジョーク風タイトルなのですが決して軽くはなかったですねえ。原田から見事勝利をもぎ取って「大一番」。重盛の中二病を投げ飛ばして「大一番」。そして信西の言うとおり後白河帝に手も触れず勝利をもぎ取った「大一番」! いやあ、よくできてますね。今回も面白かったです。
そして。
いよいよ義朝の暴発が近いようです。
保元の乱平治の乱は多少間をあけてくるのかなと思ったのですがこの勢いですとそのまま平治の乱に突入しそうな勢いで目が離せません! 待つ! 次回!

*1:この頃は太宰府ではなく大宰府

*2:後白河帝は藤原信頼と「そういう」関係だったとする話があります