平清盛 22話「勝利の代償」(6/3放送回)

みんな大好き悪左府藤原頼長退場回です! 刮目!
アバンタイトル悪左府
「早う! もっと早う走らんか!」と輿を担ぐ下人を急かす悪左府。しかしそこに矢が飛んできて下人が一人ダウン。転倒する輿! 飛び出す書物! そんな重いもの積んで早くはないですよ左大臣殿……。
よせばいいのにこの書物を掻き集める悪左府! 家人からの「殿、お逃げ下されませ!」の注進も聞こえず、こうなると悪左府の末路は……。
はい刺さった!
矢が!
首に!
ちょ、ちょっと刺激が強すぎるんじゃないですかね……ショッキング映像過ぎる……。でも首に矢がヒットしたっていうのは記録に残っているので……。
いやはや。このアバンタイトルでの頼長のありよう行動すべて「この手」の悪役に期待されているもの過ぎて感動さえおぼえます。悪左府藤原頼長、きっと見事に退場してくれるに違いません。

オープニングを挟んで……。

崇徳上皇です。高貴な顔立ちの上皇が徒で落ち延びようとする様はいたましいですね。供の者もわずかです。
上皇は「もうよい……」と側近の教長以外を解散させると「出家をしたい」と教長に告げます。教長答えて、
「おそれながら、今は僧も剃刀も思うようになりませぬ」
上皇様はそれを聞いて自嘲します。「なんと思い通りにならぬ、我が一生よ」
なんという哀れっぽさというか、無常さというか。崇徳上皇は出番こそ多くはないですけど、ひとたび出番があれば非常に印象的ですね。こんな儚げな方が後にああなってしまうなんて……。

ここまで敗者側。切り替わって勝者側。清盛の所です。もちろん勝者といえど犠牲はあります。たとえば、あの伊藤弟です。清盛らは彼の遺体に手を合わせ死を悼んでいます。そこへ後白河帝が現れねぎらいの言葉を発し、信西が「褒美を遣わす」とコメント。そうなんです、戦に勝って武士の強さと必要性は示したんですけど、まだ褒められる立場だし、与えられる立場なんですね。武士の世は、まだまだ遠い。

清盛は義朝と遭遇すると、お互いの健闘を称え「武士の世」「面白き世」「またそれか!」と笑い合います。この後すぐに平治の乱です。彼らが笑い合うのはきっとこれが最後なんでしょうね、と思うと。
清盛「そいやその刀友切って言ったね」
義朝「縁起悪いから改名しようとは思ってるんだけどねー」
清盛「友?」
義朝「何言ってんのよ! この刀の名前を言っただけなの! あんたなんか友でもなんでもないんだからね!」
ここでツンデレかよ!
清盛「鬚切(ひげきり)にせい!」
義朝「は?」
清盛「なんやそのむさ苦しい無精髭は。その太刀で切れ!」
義朝「髭切……」
なんか気に入ったような顔をして……。
謙虚な側室常盤さんの表現を挟んで、再度悪左府にカメラが移ります。
悪左府は首に矢がヒットする重傷を負いながらも南都=奈良まで逃げ延びていました! ここにあるのは藤原摂関家の屋敷。忠実の館です。しかしギリギリ HP が残ってますって感じで、もう虫の息という感じですごいです。壮絶ですね。演技力とメイクの勝利?
しかし! 忠実としてはここで頼長を迎え入れるわけにはいきません。頼長はもはや謀反人なわけで、これを受け入れては藤原摂関家が丸ごと朝敵判定されてジエンドです。しかし忠実さんとしても散々かわいがった息子なのでこれはつらい。頼長の家人も「せめてひと目だけでもお会いくださいませ!」とか言ってますし葛藤しちゃう。でも無理なものは無理。もはや希望がないと悟った悪左府は舌を噛み切ってしまいます! すごい生々しくて口からだばーって血が出てるのはショッキング映像寸前という感じでしたがまあ見せますね。このまま忠実館前にいても仕方がないということで輿は出ていくのですが。ちなみに逸話ではこうして舌を噛み切った後摂関家の影響下にある興福寺まで運ばれて死去したとか。以外に HP 高いな。
明けて翌朝。忠実宅に飛び込んでくる鳥があり……それはもちろんあの頼長のオウムでした。「チチウエ……チチウエ……」と鳴き、忠実の手の中で絶命するオウム。「我が子よおおおおお!」絶叫する忠実。忠実だって頼長が憎くてあのような仕打ちをしたわけではないのです。頼長もたぶんそれはわかっていて舌を噛んだわけで(あてつけじゃないよな……)。その二人を繋いだのがあのオウムとか。もーすごいですね。
オウムの使い方が出色だったと思います。確かにオウムと頼長は無関係ではありません。頼長の日記である「台記」に「オウムというのをもらった。こいつは人間の言葉をしゃべる。よく観察してみると舌が人間のものとにている。それで言葉を話せるのではないか」というような記述があるんです。でも、それだけ。そのオウムをこのドラマはうまく使いまくりました!

初登場

為義から送られて「為義はこういうものを送るやつ」というイメージを付加しつつ「ここで買うたことは内密にな!」と兎丸の発言をコピーして平氏の密輸情報を頼長にリーク

頼長が権勢をふるっていた時代

「シュクセイ! シュクセイ!」と叫んで大ナタ振るいまくってるなーという印象を与えつつ「オウムに何言っちゃってるのこの人……」感が出て大変よろしい

家盛とのシーンを目撃

頼長が家盛を手籠めにするシーンではカメラがオウムに映ってバサッバサバサッとオウムが羽ばたいて激しさが演出され……っておい! NHK やりすぎだろ! もっとやれ! と思ったシーン。オウムの使い方うまいなーという印象をここで抱きました。

政治的地位が低下してのち

自分抜きで帝が決まってしまいいらだちを隠せない悪左府。そこでオウムは「怪しからぬ。あのうつけの如きお方が帝とは」とか長台詞を覚えてておーいそんなこと普段から言いまくってていいんですかー感が出ていました。この先の頼長は碌なことになるまい……と思わせる演出。

保元の乱

頼長がオウム抱えて右往左往する姿に私大歓喜! こういう頼長を見たかった! こんな時に大事なのはオウムなのかよといううろたえ感が普段しっかりしてても荒事はダメなのねえと思わせて微笑ましい。
さらにその後崇徳上皇に見放されてから「頼長様の才は、古今和漢に比類なきもの」とか言うんですよオウム。昔の権勢と今のありさま、諸行無常を思わせて大変結構。このあたりの台詞は信西あたりが言ってそうでまたなあ! さすがにこれには頼長もムカついてオウムを放置したのでオウムの出番ここまでかと思ったら今回の演出でしょう。いやあものすごかった。オウムにぜひ助演男優賞を!

さてその主人の頼長。とことん苛烈、自他ともに厳しい! というイメージを振りまいて登場し、その有能さ、手段の選ばなさ、というものも見せつけて、最後に悲哀を見せて去る。なんという美しさを感じさせる悪役であったでしょうか。
前述しましたけど『平清盛』には最初期待しないようにしていて、「せめて悪左府だけでもきちんと描いてくれたらいいよ」というスタンスだったのですが、ほんと素晴らしかったです。悪左府を山本耕治がやると聞いた時点でこれはいけるだろうと思っていたのですが、期待以上でした。
今は NHK BS 時代劇『薄桜記』で主役をやってますのでそっちもチェックですよ。

さて、クラッシュされた頼長屋敷では信西が頼長の日記を読んでいます。「台記」の有名な一節ですね。やり方を選ばなかったため排撃された頼長ですが、政治への姿勢は真摯なものでありました。息子たちに自身を律しろと言い、自分が死してもその魂は朝廷に留まっているから、と言います。信西、これを黙って読んでいます。このような人物を自分は除いてしまった、となればなんとしても自分の思いを遂げなければ頼長に申し訳が立たない……そのようなことを思っているのでしょう。となれば、頼長を除いたことでもう一人の頼長が現れた、そんなことになるのではないでしょうか。

次のシーンは忠正おじさんが捕まったという報告!
伊藤脳筋忠清「伊勢の縁者を頼って隠れておいでのところを見つけたと、我が配下の者より知らせを受けましたゆえ、お連れするよう申し付けましてございます」
盛国・ザ・出来人「……これはまずいことをなさいましたな。有り体に申せば、忠正様はいまや賊となった身。それを匿えば、一門もただでは済みますまい」(余計なことしやがってこの脳筋野郎が!)
清盛「俺が命じたのだ」
えーっ! と思ったので忠清を清盛が庇ってるのかなと思ったんですがそうでもないみたいですね。
忠正「縄を解け。ここまで連れてこられたうえはどうすることもできん。縄を解け。逃げはせん」
素直にそれを聞いて縄を解かせたところ!
それっと一斉に逃げ出すおじさん一家!
こういうので本当に逃げるの初めて見たよ! でもすぐに捕まった!
清盛「おじさんは大事な人だから! 一門に欠かせないから! 今度の恩賞で播磨守になったんすよ! 豊かな土地だからもっと色々できるし! 俺を見守ってくださいよ!」
とか何とか説得するわけです。
清盛「信西殿に私から、しかとお頼みいたしますゆえ!」
あー。
直前のシーン見てる私たちからするともー大フラグにしか見えない発言です。もう情とか通じない存在になってます信西入道。まあもっとも、この頃死罪とかはないのです。悪くて流罪、遠島。だからおじさんが納得しちゃうのも当然だし、清盛も変なことを言っているわけではないのです。が、これは明らかに甘い、考えが甘いという描写ですね。
さて平氏の対比先源氏でも為義さんが捕縛されたという情報が入りました。
義朝「えっそんなの俺命じてないよ? 残党狩り?」
由良「私が命じました」
義朝「何で余計なことすんだよ!」
由良「遠島にでもなったらもう会えないのよ?」
義朝「知るかボケ! もう親でも子でもねえええんだよ!」
そんなことを言っていなくなっちゃうので、代理で為義さんと会う由良。
為義「義朝に助けてもらうつもりねーから!」
由良「いやそういう話じゃなくてね。今回の恩賞で殿は左馬頭となって、昇殿を許されたんで」
為義「えっそれって義朝が殿上人になったってこと?!」
由良「はい」
為義「そうか……そうか……!」
この嬉しそうな顔。頬が緩むのを抑えようとはしているみたいなんですが、どうしようもない感じ。すごく胸に来ますね。敵対した息子ではあるけど、自分の悲願をついに達成してくれたという。敵対しても親と子であることは変わりはないという。何のために小日向さんを起用したのかといったら、このシーンのためじゃないかと。
崇徳上皇は出家したようです、平忠正源為義は捕縛されました……と後白河帝の所に情報が集まっています。「ただちに罪を定めよ」と後白河帝は命じていますが自分は双六やっています。相手は藤原信頼
信頼「アッー! さすがお強い!」
ところで後白河と信頼は"そういう"関係にあったとする話もあるそうですね。
後白河「信頼は弱すぎてつまんね。もっと強い奴と戦いたい!」
後白河帝がそう言うと登場したのは美福門院得子!
美福門院得子「何か政敵ぶちのめして調子に乗ってるみたいだけどお前なんか左のワンポイントリリーフなんだからな! 右バッターが来たら即交代なんだからな」
とか何とか釘を刺しつつ勝ち逃げしていきました。
後白河「ゾクゾクするのう……翔太郎。朕は、生きておる……」
双六バトルまでは邪魔者いなくなったし自分最強伝説だと思っていたのでしょうか。でもそうではないとわからされてゾクゾク来ちゃった後白河帝。こりゃまだまだやるで。
平氏館では、池禅尼(家盛・頼盛ママ)と忠正おじさんが語らっています。おじさんが上皇方についたのは池禅尼の意思もあってのことですから、引け目があるんですね。でもおじさんはそれを否定します。
忠正「あの時も……兄上があの赤子を引き取ると言うたあの時も、ああ、これは一生わしが尻拭いせねばならぬ……そう思うた。それが、とてつもないことをしでかす男を兄に持つ、弟の定めというものじゃ」
自分はサブポジなんだからさ、損なところは引っかぶる、それでいいんだよ。家盛、頼盛は大変だろうけどさ……とまあ、こういうことなんでしょうね
そのおじさんをなんとか助けようと信西に依頼する清盛。まあ勝つためには清盛の武力が必要だったし、これからも平氏の財力が信西には必要だろうし、そしたら清盛のお願いは聞けぬはずもないだろうと、そう清盛が思うのも無理もないこと。だからなんかどっか自信が漂ってるようなお願いの仕方になっているのも当然。でも、信西は「「この信西に任せるが良い。古今の例にのっとり、また先を見据えて、世にとってもっとも良き断を下そうぞ」としか言っていません。おじさんに便宜を図るとは一言も言っていないのです。これは明らかにだましに来ています。アンブッシュアラートです。でも清盛は安心して帰っちゃいます。ああ……。まあここで食い下がってもどうとなるものでもないですが……。しかしこの時の信西の尋常じゃない顔がすごかった。狂人の顔です。怖いわあ。
その狂人込みで始まった軍事裁判ですけど、バンバン信西が差配しちゃう。
藤原忠実は荘園全部没収、崇徳上皇は400年ぶりの天皇経験者配流とスーパー厳罰モードです。こんな中武士が甘い決着になるはずもありません。バランスを取らざるを得ない。そうなると、宗盛たちに以前作ったものの代わりの竹馬を作っているおじさんを尻目に、信西に呼び出された清盛は、当然
「そなたの叔父・平忠正とその子、長盛、忠綱、正綱、通正の処分が決まった。」
「死罪じゃ。今述べた罪人どもを、斬首せよ」
こういう言葉を聞くしかないのです。一瞬理解ができなかった清盛。死罪とかもう長いこと存在しないわけですからね。理解して、唇が震えている。何も言い返せず……次回へ続きます。

いやあ。
おじさんは今回斬られませんでしたか。
おじさんは散々これまで描きこまれていて、このおじさんを斬ることが清盛にとっての最大の通過儀礼になることはわかっていたので当然といえば当然なのですが、気を持たすなあ。

ところで、平氏のみんなの戦い終わっての食事シーンは興味深かったですね。以前棟梁の妻として自覚が足りなかった時子は食事の準備がきちんとできなかったんですけど、もう自覚が芽生えてきましたからね。ちゃんと尾頭つきの鯛を準備してくるんです。
すると清盛次男の基盛は初陣ショックでこれを食べられない。でも長男重盛はみっともないから何とか我慢して食べちゃうみたいなね。清盛は「まーそーゆーもんよね」とか言って自分は普通に食べてる。この対比が面白かったですね。
あとねえ、清盛と義朝が喜び合うシーンですね。この後平治の乱が控えています。清盛 vs 義朝とも言える戦いです。となるとこの二人が笑い合えるシーンはもう最後かもと思うと、色々……。いやあ、この先が楽しみです。
NHKオンデマンドでの視聴はこちらです→http://www.nhk-ondemand.jp/program/P201100085300000/#/0/0/