三国時代における武具事情と盾

また
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1314495623
これのブックマークコメントからの話なんですけど……。

moons ベストアンサーすごいけど、西洋とか中国もそんなに盾を実用してたんだろうか。三国志でも名のある武将が盾持ってるイメージないよ。ゲームでバランスとるためのアイテムなんじゃないのか。

はてなブックマーク - 日本にはなぜ盾はないのでしょうか?世界中、どこでも剣と盾がセッ... - Yahoo!知恵袋

三国志
よし専門分野だ。
三国時代のメイン武器は長兵、つまりポールウェポンです。両手武器ですので、盾は持てません。
矛と呼ばれる槍のような*1武器と、トの形の穂先を持った戟という武器が一般的です。
斧(大斧)という、柄の長い斧も用いられた可能性はありますが、これは主に工作用の道具です。
戈という対戦車*2用の武器も用いられていた可能性もありますが、主に儀礼用です。偃月刀はこの時代存在しません。

両手がふさがっているのなら、何で防御するのかというと、鎧です。
この時代は主に両当鎧と明光鎧と呼ばれる鎧が用いられました。いずれもラメラーアーマーです。
両当鎧は胸にも背にも前掛けのように垂れ下がったラメラーアーマーで、腰を帯で結んで使います。動きやすいのが売りです。騎兵が良く用いたといいます。
明光鎧はそれに肩当ての部分を追加し、さらに、胸部と背面に磨き上げられた鉄板を配することで防御力を強化したものです。
諸葛亮はこれを改良した、わきの下から二の腕までを防御する筒袖鎧という鎧を開発しています。

で。

この鎧が使えない環境がありました。水上戦です。
船から落下した場合に鎧を着ていては沈んでしまいます。また、水上戦で近接武器が用いられるのは、敵の船に斬り込むか、味方の船に斬り込まれた際ということになります。軍船の甲板上には多くの構造物があり、また狭いので長兵はうまく扱えません。そこで短兵を用います。短兵とは片手持ちの武器の総称です。片刃の剣で、斬撃にすぐれる「刀」や両刃で刺突にすぐれる「剣」などのことをさします。この時代「剣」は半ば儀礼的なものとなっており、もっぱら「刀」が用いられました。特に水上戦では「刀」が良く用いられたそうです。

短兵を用いるため片手が空き、鎧がないので防御が不十分となれば、そりゃ盾を使いますよね。「彭排」といいます。主に木、竹製です。金属で補強することもあります。

というわけで、鎧を使用できない、しない状況に限って盾が用いられていましたが、一般的ではありませんでした。
あんまり盾が有効だったって話が出てきませんねー。盾全盛はファランクス時代になってしまうんでしょうか。

*1:この時代、「槍」と言えば設置して敵の突入を防ぐ障害物

*2:タンクではなくてチャリオット