侵し掠めること火の如く

ハルちゃんについて

ハルちゃんねえ。勝千代時代は結構涼やかな顔で、おー聡明そうな若でありますな、と思っていたら成人してカピバラですからね。ちょっとビックリした。
カピバラ化してからはやや馬謖系気味なれどまあ聡明なお屋形様ですね顔はカピバラみたいだけど、といった感じでしたが暗黒化してからというもの暗黒から脱してもえーこれが武田晴信ですか? なんかただのエロカピバラっぽいんですけどー、みたいな雰囲気になってしまって、どうしようかと思ったのですが、出家してからは急に人間力が高まって紛れもなく武田信玄だこの人! と思うようになりました。そして第四次川中島の決戦に至り諏訪法性の兜を被って「武田信玄」が完成しました。さっすが演劇の血統。歌舞伎のプリンスでありますな。カピバラだけど。
若い頃と終盤では喋り方だけでなく声の出し方もだいぶ違ってきているのですよ。録画されている方は見直すと面白いでしょうね。録画されていない方はその辺気をつけて総集編を見ると面白いかもです。
しかし NHK も最終回直前にカピバラ映像をわざわざ流さなくても。テンション上がりましたけど! 身震いがするのう!

典厩信繁について

本当に亀さんと血縁ないの? と思うぐらい兄弟みたいな雰囲気が出ていました。
この武田信繁という人は大した人物のようで、彼の訃報が周辺諸国に知れ渡ると弔問の使者が甲斐を訪れたとか。戦国時代なのにですよ?
風林火山の信繁もその立派ぶりは結構出ていました。特に晴信が信虎に謀反を起こすと聞いてそれに同調するシーンは良かった。「よっくぞ決意なされた! よくぞ背かれた!」のあたりはぞくぞくしましたよ。でもなあちょっと出番少な過ぎですよね。個人的には倍は出番が欲しかった。それでも兄や諸角さんとの絆といったところはしっかり押さえてはいたので文句を言うほどではないのですが、出番が少なかったせいでその辺もやや唐突に見えましたかね。
しかし諸角さんを助けに行くところや第四次川中島で突出する時に手勢が少なすぎて笑った。全般的にエキストラの数が足りてないのはわかってたんですが何だか信繁隊の人手不足ばっかり私には気になって何だよ信繁ひそかにハルちゃんに嫌われてんの? とか思いましてからに。

信廉について

信廉イケメン過ぎでしょ。信廉はハルちゃんの影武者として振舞ったら全然周辺諸国は気づかなかったというじゃない。だから信廉もカピバラじゃないと……といってもまあ兄弟っぽい人を信繁に割り当てたらそうそう似た人を他に起用することもできませんかね。

信虎について

最初出てきた時随分ゆっくり喋るのでおいおいこの信虎さんはボケちゃってるの? と思ったのですが、まあ多少ボケてる感じはしないでもなかったですがまあこれはこれで。風林火山は全体的に台詞ゆっくりめでしたしね。
信虎さんは「ゆー姫を側室にしたい」を遠回しに言うシーンのエロ親父ぶりも良かったですけどやっぱり追放される回が良かったですね。
義元が「〜戻る甲斐なし」と詠んだ歌を晴信のことと勘違いして良く詠んだ良く詠んだと義元に言ってあきれられたり、晴信に追放されて「〜戻る甲斐なし」の意味にようやく気付いて涙目になったり、もう出番なくなるからってハルちゃんのことを「わしが育てた……武田家しい武将」とか駄洒落を言ったりして素晴らしかったです。
氏康による北条氏綱公御書置の「その上 無道の働きにて 利を得たる者 天罰終に遁れ難し」の音読の声が信虎追放シーンに被るのは神演出だったと思っています。
信虎は晴信より後になって死ぬので最終回前後に再登場して欲しかったのですがさすがに無理でしたか。今川へ追放されてからもあんまり懲りずに結構暴れてるんですけどねー。

大井ママについて

武田家というのは親子で戦ったり兄弟で戦ったりで内輪揉めが非常に多い家系なのです。たとえば信虎は14歳で家督を継いだのですが、それは信虎の父信縄が弟の油川信恵と戦って敗死したためなんですね。そんな代々まとまらない武田家にあって、大井夫人から生まれた晴信、信繁、信廉の三兄弟は例外的に非常に仲が良かった。これを見るに非常に賢明な女性であったことが思われますが、風林火山の大井夫人も武田家の良心! という感じでしたね。家中のゴタゴタをそつなくまとめたりして。
なので大井ママの死期が近づくにつれ「武田家はどうなってしまうの」という思いがどんどん大きくなって困りました。実際どうにもならなくて少しずつ武田家滅亡につながっていくほころびが見えていくのですが……。
しかしアレですな、風林火山は勘助が主人公のドラマなのですから第四次川中島で終了するのが確定なのに、ドラマ終了後の武田の行く末に伏線張ってましたね。続きを作りたいとか思ってるんでしょうか。

義信について

風林火山終了後の武田のありようを暗示させるキャラでした。正論をふりかざす、それはいいです。しかし時には清濁併せ呑む度量がなければとても戦国大名はつとまらない、そんな感じ。
義元亡き駿河を信玄は攻めようとするのですが、それに反発したのが義信。駿河は同盟国であるというのが理由ですが、しかし武田が攻めずとも織田、徳川に飲み込まれてしまう運命ではありました。武田はそれをみすみす許すわけにはいきませんし、海は欲しい。でも義信が突っ張ったため彼は幽閉され勝頼が(仮に)後を継ぐことになったのですが、勝頼はそもそも諏訪四郎勝頼なのであり武田の嫡流とは見なされないので家臣に侮られ……といったところ。
そういう融通の利かない感じは良く出ていましたね。

勝頼について

ハルちゃんの幼少時と同じ役者さんです。大河「武田信玄」の際も晴信幼少時と勝頼の役者を同じにしていたそうです。時々、このような大河武田信玄を意識した演出は見受けられましたね。勘助が越後へ鉄砲を売りに行くとか。
さすがに出番が少なすぎて何ともですが、頭は悪くなさそうでしたね。って、勝頼は世間で言われているほどダメ主君じゃないと私は考えているので、私にとっては当然といえば当然なのですが。簡単に言うと勝頼の時代には中央集権化を進めないと生き延びられないような周囲の状況になっていたのに、武田は全然中央集権化が出来ておらず、それを勝頼の代になって急に進めようとしても無理でした、という話かと。