スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ その2

ある程度ネタバレありで。畳んでおきます。
そもそも開幕から書割の背景をバックにクエンティン・タランティーノですよ。ガンマンQTが蛇を捕らえた鷲を銃撃! 落ちてきた蛇の喉を切り裂いて丸呑みしていた卵を取り出したところで彼を探していた香取慎吾が登場。QTは平家物語の出だしを暗誦しながらこれを瞬殺。そして卵を割って椀に入れ、腰に挿していた箸でかき混ぜすき焼きの肉を喰うと、こういう開幕。訳がわかりません。無駄にかっこ良過ぎます。
このガンマンQTは後ですき焼きが甘いと言って鍋ごとテーブルをひっくり返し砂糖入れ過ぎんなすき焼きは菓子じゃねえんだぞ甘味は白菜から引き出せと何度言ったらと叫び大体何で入ってる豆腐が絹ごしなんだふざけんじゃねえぞと言って桃井かおりに豆腐を投げ付けるのです。ひどいな! 
勿論このQT以外にも変なキャラばっかりで、義経は手下に真剣白刃取りを習得させようとして斬り死にさせてしまいますし、重盛はいい人過ぎてひどい目に遭いますし、先住民族とか言われてる人は何故か夕方になるとトランペットを吹きアイヌの楽器であるムックリを首から下げていますし、保安官は二股膏薬が過ぎてゴラム*1のように自問自答を繰り返す二重人格になってしまいますし、弁慶は石橋貴明です。
でも一番ひどいのは佐藤浩市の清盛ですね。清盛は馬鹿なのです。平家物語を読んで万事は諸行無常であり流転するものなので今は自分らは劣勢だがいつか逆転すると現実逃避し、シェークスピアの「ヘンリー6世」を読んで(ばら戦争では赤白の内赤が勝つので)俺はこれからヘンリーだ! と言い出したりします。しかも馬鹿の上小心で極悪なので、誠心誠意仕えている重盛を盾に取ったり、ガトリングガンで狙われるだけで失神したり、手下を電車ごっこのように連結させて自分は最後尾に陣取るという非効率的な盾の取り方をしたりとやりたい放題です。
他にはそうですね、西部劇のお約束みたいな雰囲気なのがいくつかありました。私は西部劇には詳しくないので良くわからないのですが、多分元ねたがあるんだろうなって感じのが。一個だけ分かったのは棺桶からガトリングガンが出てくるというやつ。聞いたことありますね。「続・荒野の用心棒」なのですが、原題は「ジャンゴ」だったはずです。ああ、セリフは「西部劇」なので全部英語です。あと、街並みや周囲の地形が西部なのか日本なのかイタリアなのかさっぱりわかりません。わざとやってるんでしょうけど、ここまでわけがわからないのはなかなか出来ないと思います。
多分に人を選ぶと思いますが凄い映画です。さすがベネチア映画祭に持って行って観客からスタンディングオベーション、拍手喝采を受けておきながら何の賞もなしという作品なだけはあります。この変なノリを愛せる人とかQTファンとか三池監督がQTで遊んでる様を見たい人とかは是非見に行くべきだと思います。
http://cinematoday.jp/vote/2
↑ヘンリー大人気だな!!

*1:ゴクリ