図解 近接武器

私はトーキョーNOVAばっかりとかやっていたわけではない TRPG 者ということもあって、中世くらいまでの武器に関しては結構詳しいつもりだったのです。

例えばこれがカタールではなくて本当はジャマダハルという名前のインドの武器で、間違いの元はインドのものをイギリスに紹介する図鑑の中で誤って表記されたためとかそういう知識はあったのですが、それでも知らない話が色々あって興味深かったです。

これはフットマンズフレイルというのですが、初めて知りました。通常のフレイルというのはこの柄の部分がずっと短くて、振り回して鎖から先の部分を遠心力を利用して敵にぶつけるという打撃武器です。剣などで防御しようとしても鎖の先が剣を回りこんで命中したりする上、鎧の上から叩かれても衝撃が伝わりダメージとなるので防ぐのが難しい武器です。
で、このフットマンズフレイルはその名前の通り歩兵用の武器なのです。おそらく対騎兵用なんでしょうね。西洋の戦争はわざわざ殺すまでやりあったりはあまりしなくて、落馬した騎士なんかは捕獲してあとで身代金要求した方が良い、と。そういう常識がまかり通っていた中その辺を無視して滅茶苦茶やったからちょう強かったのがジャンヌダルクで、それに匹敵するのが日本では源義経で、彼は「非戦闘員は殺さない」という常識を無視して壇ノ浦で船の漕ぎ手を殺しまくって勝利しました。双方とも「狡兎死して走狗烹らる」となってしまったところも似ていますね。
話がそれました。で、このフットマンズフレイル、一見使いにくそうですが結構優秀な武器だったようで、普通の棒だと考えて殴っても鎖の先の部分はちゃんと命中しますし、柄の短い通常のフレイルだと考えられる、先の部分が自分に命中するということもありません。一発で相手を殺せなくとも、自力で起き上がることができないほど重い鎧を着た騎士に対しては落馬さえさせればあとは捕虜にするだけですから、長い柄を使って頭部を狙ってやればいいのですね。元々フレイルが防御しにくい武器であることを考えると、非常に効率的な武器ですね。
他にもブロードソードが騎兵用の武器だと初めて知りました。馬上からは槍だという固定観念があったのですが、よく考えたら普通の槍を馬上で使用しても仕方ありません。槍で馬の突進力を利用したければランスを使用する方が威力が期待できますし、普通の槍では薙ぎ払いがききません。敵は正面だけにいるわけではないですから、こういう武器も馬上で必要になるわけですね。勉強になりました。
とまあ、普通に勉強になるのですが、私がこの本を買った決め手は時々変なことが書かれている点で、例えばダガーで防御を行う場合については

逆手で「敵の剣を防御する」のは格好よいが、度胸と訓練が必要なので初心者は控えた方が無難だ。

レイピアとマンゴーシュ*1の二刀流に関するところでは

相手に「マンゴーシュ側からは攻撃がこない」と教えてやる義理はないので、思い出したようなタイミングで左手の攻撃を仕掛けてやり「いったいどっちから攻撃が来るんだ?」と疑心暗鬼に追い込んでやろう。

と書いてあって「えー実践させるつもりかよ!」とか思わせます。他にも投擲武器のダートのところでは、バラや羽ペンの絵が描かれていて

世の中にはこういったものを投げて自己主張する強者も存在する。彼らは「何かと紙一重」の場合が多いので、不運にも相対す羽目になった場合は十分な注意が必要である。

とかわけのわからないことが書いてあるんですね。最高。ドリルやライトセイバーやガンシールド*2なんかの話も載ってたりして、ネタと知識と両立できているなかなか良い本だと思います。これ系に興味のある方は是非。

図解 近接武器 (F-Files)

図解 近接武器 (F-Files)

*1:左手に持つ護拳が大きい防御用の短剣

*2:ガンブレイズウエスト!