耳かきお蝶

コミックビームFellows に載っていた、同じ作者による『剣姫』が非常に良かった(id:rerasiu:20061105:p2)ので、他のものも読んでみたいと思い買ってみました。
江戸時代後期を舞台として、耳かきを生業とするお蝶という女性を取り巻く様々な……まあ大体は人情話ですね。このお蝶の耳かきが非常に達者でして、受けた人を夢心地にすることができるので色々な人が彼女の周りに集まってきます。例えば殿の勘気に触れて文字通り裸一貫となった芸達者な浪人とか、それを討たんとして追ってきたものの嫌になって版画の世界に身を投じた若侍などなど。
単純に癒しというわけではないのですが。全体的に優しいと言うか、穏やかなトーンで描かれた作品です。かといって取りとめがなかったり、退屈だったりするわけではありません。まあ、私の場合時代物と見ると自動的に一飜乗せてしまうのでその分差し引いて聞いていただく必要があるかとは思いますが、それでもおすすめできると思います。
『剣姫』同様、やはり使われている手法は新しいものではなく、20年前にもあるようなものばかりですが、これを完全に自家薬籠中の者とし、自在に使いこなしているので味があり、漫画として非常に面白いのですね。
そう言えば『ARIA』もコマを斜めに切ったりなどの奇抜なことはせず、基本に忠実ですよね。多少性格は異なりますが、西の『ARIA』東の『耳かきお蝶』と並べて称したいと思える作品でした。

耳かきお蝶 1 (アクションコミックス)

耳かきお蝶 1 (アクションコミックス)