刺客といえば
まあ荊軻かなといったところで。
荊軻というのは、中国の戦国時代に燕の太子丹が秦王政*1に対して放った刺客暗殺者です。
昔共に趙の人質だったので馴染みの政にすげなくされた太子丹*2は怒り心頭、舐めやがってあいつぶっ殺してやる*3と暗殺を図ったのです*4。
その荊軻が別離の時
風蕭蕭兮易水寒
壮士一去兮不復還
と詠ったのですが、これが沁みる。
風、蕭蕭(しょうしょう)として易水寒し
壮士一たび去って復(ま)た還(かえ)らず
と読みます。
太子丹はアホですが荊軻のこの悲壮な決意の美しさにはそれは何の関係もないです。
結局この暗殺は失敗に終わります。
荊軻は燕が秦に降伏すると偽り、以前秦から燕に亡命した樊於期という将軍*5の首と、燕が秦に献上する土地の地図を携えて、燕の降伏の使者であると称して秦に入りました。
その地図の中に匕首が隠してあり、政が地図を広げた終わった時に出てきた匕首で荊軻が秦王を刺し殺そうとしたのですが届かず、長過ぎて抜けなかった剣をようやく抜いた政の手で斬られてしまいました*6。
ちなみにこれで怒った政は燕に兵を進め、ビビった父親に太子丹は殺されて首を政に送られますが、そのまま秦は燕を蹂躙することになります。親子揃ってどうしようもないな燕王家。
という話を漢文の講義で聞いているときにですね、先生が「太子丹」「太子丹」と言うのが「太子たん」「太子たん」と聞こえて笑えてしまったのは良い思い出。